松田宣浩 ストレスを補うのは、人間の基本である睡眠や食事(前編)
2017.06.24
再びの試練、極度のスランプ。睡眠12時間を順守。
野球の国際大会ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝、試合終盤の守備で犯した痛恨のミスが敗戦に直結してしまった松田宣浩選手(34)。
自らを「戦犯」と責めながらも、大局観とも言うべき思考法で「他ではできない経験」と自身のプラスにも変えた。日本代表「侍ジャパン」の一員だったという誇りと自覚を胸に、迎えたプロ野球のレギュラーシーズン。再び試練が待ち受けていた。それは、極度の打撃不振だった。
他球団を見渡せば、日本代表で同僚だった野手陣にも不調に陥る者が少なくなかった。DeNAの筒香嘉智、日本ハムの中田翔…。確かに苦しんではいたが、そうこうするうちに今季1号が生まれてもいた。「よく、WBCの疲労が残ってる、なんて言われてて。それも多少はあったと思うんです。実際、時差ぼけもしばらく残った。それで、より睡眠もしっかりとるようにしてたんです」。もともと睡眠12時間を心掛ける男。それを順守した。
モチベーションは高かった、思いつく限りで練習した。
「でも、一向に良くならなくて。心もバッチリでしたよ、モチベーションも高かった。これもWBCの影響を言う人がいて、大きな国際大会の後で日本のプロ野球への意欲が湧かないんじゃないかって言うんだけど。そんな気持ちは全くなかったし、むしろ代表に選ばれていた以上、いい結果を出さなアカンと」スランプ中、思いつく限りのアプローチでバッティング練習した。足幅、グリップの位置、重心。「もうぐちゃぐちゃでしたね、いろいろやって。まずは基本の反対(右)方向へ打っていったりとか。そういう部分を、4月はずっと見つめていって。いくつかポイントがあって、はまったのが一つ、二つあった」。4月30日。大阪で今季1号ホームランが出た。「で、結果が出て、よし、となりますよね」
急転の復調、自己タイ。後で考えたら問題は・・・
そこからは漫画のような復調ぶりだった。5月は急転の8本塁打。月間自己最多タイの数字だった。「後で考えたら、技術の問題だったんですね。海外の投手をWBCの1カ月間、打ってたんで。日本の投手の球を打つ技術が身についてなかったと思う」。海外の投手の、打者の手元で変化する速球に対応していた結果、日本の投手が投げる、直線軌道の速球に対応できていなかった―というのが、松田選手の実感だ。「あの日(4月30日)打ってなかったら、多分、その先もずっと苦しんで、打ってなかったと思う」。答えが分かっていれば苦労はない。やっている最中はもがくしかない。心と体ではなく、技術の問題だったという松田選手の話には「後で考えたら」という注釈がついている。