ボクシング・八重樫東×元読売ジャイアンツ・鈴木尚広が対談【後編】 「体を緩ませる」トレーニング法のメリット

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同じ東北出身で意気投合。「コツコツ積み上げる作業は東北の人は得意なのかもしれない」

 スーパーフライ級で日本人初の4階級制覇を目指すボクシング・八重樫東選手と、現役時代に「代走の神様」の異名で活躍した鈴木尚広氏の対談。後半は故障防止につながる「体を緩ませる」トレーニング方法、同じ東北人の気質について「粘り強さ、我慢強さがある」と話が盛り上がった。

対談前編はこちら(http://cocokara-next.com/fitness/yaegashiakira-suzukitakahiro-conversation/)


[八重樫] 故障は多いほうですか?

[鈴木] 20代は凄くケガは多くて30代になってからケガをしなくなりました。普通年取るとケガをしやすくなるけど逆の人間ですね。ケガをすることは命取り。時間はかかったけどケガはしないという思いでやっていた。完成してやり続けた結果、ケガをする意識がなかった。ノーアップでも動ける体づくりをしていた。結構やりましたね。オフが2か月あるけど12、1月に週5、週6はやった。やってやり倒して体を変えようと。

[八重樫] それは凄いですね。ケガをしない体づくりは具体的に?

[鈴木] いかに自分の体を緩ませられるかですね。緩んだ状態で力が入る時はしっかり力が入る。抜ける時は抜けるものがないと。試合は常に緊張の塊。観客に見られれば心は緊張するし体もつながっているからどうしても反応する。試合は当然緊張するのはベースとして、それ以前に練習やトレーニングでゆるませる、いつでも常に体を動かせるトレーニングを積み重ねていた。その結果自分で自分の体を緩ませられるようになった。緩んだことが大きかった。

[八重樫] 確かにボクシングも緊張して硬くなった時にドーンときたらバキーンって折れますね。

[鈴木] 緩ませるとエネルギーが最小限で済むんです。オーバーアクション、緊張の連続でいくと疲れるし全然違う。自分主導権を握って緩みながらスタートをする。そこを意識しながらトレーニングをしていました。ウエートトレーニングをやるより自分の出力が上がりました。体性感覚的意識というんですけど、その意識が内から芽生えると精神的にもすごく安定する。力は単一的な力でなく、いかに全部の自分の力を出せるかを簡単にできるようになった。腹筋も正直そこからほとんどやっていません。僕の意味合いの中で腹筋も固める動作に入るので。みぞおちがやわらかくしないと、固まってしまうとバットの反応が一瞬遅れる。当たったと思っても打ち損じる可能性がある。みぞおちはいつも緩めていました。

[八重樫] パンチも同じですかね?

[鈴木] もしかしたらそうかもしれません。みぞおちを硬いと動きが制御される。やわらかい、緩めると色々な動きができる。力を逃がせることもできる。

[八重樫] 凄いですね。その感覚が。トレーニング理論も嗅覚が大事。凄い鋭いんだと思います。

[鈴木] ただマニアックなだけですよ(笑)。固めている動作をしている時間がもったいなかったなって。体の使い方の問題なので。

[八重樫] 僕も元々そういう志向はあったんです。今まではライトフライ級でやっていて。48.9キロなんですよ。大体僕の普段は56キロあるけど。これ以上筋量を増やさずにできるだけ出力を上げたいというのが頭にあったんです。物理的に難しいけどそこでたどりつたのが体の使い方。全身のトータルコーディネートによる出力の出し方が頭の中にあった。肩甲骨とか股関節の使い方ですね。同じ体重でも体の使い方がうまいほうがパワーが出る。「緩める」もそうなんですよね。僕の今のフィジカルトレーナーも抜く、抜くって。バッティングもゴルフもパンチも抜くのが大事だって。慣性の法則で圧が抜けていかないと重さが伝わらない。鈴木さんのそのお話は凄く理にかなっていると思います。面白いなって。

[鈴木] 盗塁のスタートは抜く感覚しかなかったです。力入れていると思うじゃないですか。力を抜いたほうが反力も得られるんです。そのエネルギーを使って初速を加速させる。トレーニングもいろんな形があると思うんです。失敗しても学びがある。ダメだといわれるほうが楽しい。できるようになるまでやればいい。一回チャレンジして「こういう感覚か」とかわかる。

[八重樫] すごくわかります。僕も何でもやりたい派。全然違うトレーニングもしたい。その人その人の特性がある。こうやったらこうなるんじゃないかなという興味が尽きない。きつい練習だけど楽しい。そこも一つのモチベーション。どうボクシングに落とし込めるのか、生かせるのかを頭の中で考えるのかも好きですね。

東北人の気質


[八重樫] 僕は性格的に単純で。凄い打ち合いをしたくなるんです。でも感覚的に体が抜く作業が入っていればもっと打ち合いも楽になるんじゃないかなって。ボコボコにならないんじゃないかなって(笑)。思考の問題ですけど抜いた時に体をしっかり使えているかと。永遠の課題ですね。感情が前に出ちゃう。熱くなっちゃうんで。いつも(セコンドで)手綱を締めてもらって。途中から「もういってこい!」といわれる(笑)。でも勝負事なので勝ちに徹さないといけない。自制するのも大事。こんな腫れぼったい顔じゃなかったんですけどね。まぶたがどんどん重くなってきて。井上尚弥はきれいな顔をしているのでいいなって思うんですけど(笑)。

[鈴木] それが八重樫さんの持ち味の良さですよ。東北の方は出しゃばらない、黙々と淡々と。ウサギと亀で言えば亀かもしれない。でも粘り強さがある。我慢強さもある。自分のやるべきことがわかっている。ここが足りないからやろうと。地道にやるのが東北人の県民性なのかなって。

[八重樫] それは凄く思います。口数は多くないけど気持ちは強い。これと決めたらずっとやり続ける。背中で見せるタイプが多いですよね。コツコツ積み上げる作業は東北の人は得意なのかもしれない。苦じゃないし明確にわかっている。

[鈴木] お話すると、(八重樫は)一流の人は自分をマネジメントできているんだなって。多分凄く頑固だと思う。内に秘めたハートは強いから打ち合いをするのだと思う。男として自分のポリシーがある。今度打ち合いになったら感情が出たなと。東北気質のマグマが噴火して東北人じゃなくなったなって(笑)。

[八重樫] (鈴木は)一流の方ですね。思考の作り方というか、凄く自分を客観的にみられている。さらに自分の主観とうまく合わせてオリジナルができて特性がわかっている。凄く頭のいい方なんだなと。自分が欲しいものに対しての模索の仕方、凄い貪欲さがあったりとかかっこいいなと思う。東北つながりで地盤みたいなのは一緒で凄くうれしかった。

[鈴木] 指導者向きだと思います。八重樫さんの存在自体が子供たちが変われるきっかけになる。でもそれはあと20年後ぐらい考えてもらえれば(笑)。

[八重樫] 現役も今年、来年で終わりぐらいの気持ちでやっているんです。負けたら最後ぐらいのレベルなんで。年も年なんで。あとはもう全うすることだけを念頭に置こうかなと。納得するトレーニングをしてあとは最高の結果が出れば一番。そうでなくても全うできればいいかなと。

[鈴木] 自己責任で戦える人は強いです。ボクシング道を貫いて熱い試合を見せてほしい。これからの試合の見方が変わるし楽しみにしています。

■編集部からのお知らせ
3月7日に発売の雑誌「CoCoKARAnext」では読売ジャイアンツ・菅野智之投手のインタビューの他、プロ野球選手に学ぶ仕事術などストレスフルな時期を乗り越える情報を掲載。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]

鈴木 尚広(すずき・たかひろ)

1978年4月27日、福島県相馬市生まれの39歳。相馬高から96年ドラフト4位で巨人入団。俊足好打でチームに貢献し、昨季限りで現役引退した。代走で132盗塁は日本記録。盗塁成功率は.829で200盗塁以上の選手では最も高い。通算1130試合出場で打率.265、10本塁打、75打点。身長180センチ、体重78キロ。右投両打。
公式サイト https://suzukitakahiro.com/

八重樫 東(やえがし・あきら)

1983年2月25日、岩手県北上市生まれの35歳。拓殖大在籍時に国体でライトフライ級優勝。アマチュア戦績は70戦56勝(15KO)14敗。卒業後に大橋ジムに入門。元WBA世界ミニマム級王者、元WBC世界フライ級王者、元IBF世界ライトフライ級王者と世界3階級制覇を成し遂げる。スーパーフライ級で日本人初の4階級制覇を目指す。身長162センチ。右のボクサーファイター。

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