チェリスト自ら三越伊勢丹に企画を持ち込み話題に!その意外な自己分析とは?

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アーティスト、そしてプロデューサーとして「点と点」を「線」にする喜び


チェリストの新倉瞳さんはスイスと日本を中心に精力的な演奏活動を行う一方、三越伊勢丹とのドレスプロジェクトにも関わるなど、プロデューサーとしてもクラシック界の枠を超え、存在感を発揮している。アーティスト、そしてプロデューサーとして「点と点」を「線」にする喜びについて、聞いた。

 チェロ奏者として確固たる地位を確立した新倉さんだが、その姿勢は決して「守り」に入ることはない。昨年には大手百貨店の三越伊勢丹と共同開発。演奏家や、演奏会を楽しむ女性達へ魅力的なドレススタイルを提案しようとコラボレーションに臨み、話題を呼んだ。きっかけはどのようなものだったのか。

新倉 「音楽家は耳で感じる、心で感じるのはもちろんなのですが、視覚的に入ってきた瞬間に『うわぁ』ってなりたいじゃないですか。今からすごくシリアスな曲を弾くのにピンクの衣装で出てきて、うきうきする曲を弾くのかなと思ったら、始まったら暗かったりとか(笑)。そういうのは私にとって違和感があったんです。ヨーロッパに長くいると、黒い衣装で演奏することが多いんです。それって、音楽に集中できることでもあるし、音楽に対するリスペクトも感じます。例えばドビュッシーとか、モネの絵画のような演奏をする時には、淡い薄紫だとか、ピンクもいいかもしれないし。そういう色彩感覚が絵みたいになって欲しいなと思ったんです。日本に帰ってくるたび、演奏会に行っては『このドレスいいなあ』という時と『この人めちゃくちゃうまいのに、なんかちょっと陳腐に聞こえちゃうのは嫌だな』とか、それがすごく残念で。何かできることはないかなと思った時に、プロジェクトをやろうと思ったんです」

 善は急げと言わんばかりに即、行動に移した。

新倉 「それで企画書を書いて、持って行ったんです。伊勢丹の社長さんに。そこにつながるルートをたどって、たどってだったんですが。『これ、やりたいんですけど、どうですかね』と言ったら、『ちょうど、音楽と何かやりたかったんです。やりましょう』と言っていただいて。だから、普段から思い描いているというのはすごく大事だなと思います」

 トップに直談判を試みるポジティブな姿勢こそが、ビジョンを現実にした。しかし、新倉さんの自己分析は意外なものでもあった。

照らされて輝ける月タイプ。それに気付いてから変わった。

新倉 「私は太陽と月でいえば、絶対に月タイプだと思うんです。誰かが照らしてくれて、やっと光ることができる。月としての準備はしているんだけど、ボコボコで(笑)。それでも、照らしてもらうとすごく輝けると思っていて。で、私はずっと太陽になりたいと思っていたんです、実を言うと。もうちょっと自分が誰かを助けてあげて、燦々と-と思っていたんですが、そっちじゃないなと気づいて。じゃあ、私は月として何ができるのかなと考えるようになったら、願い事が言いやすくなったというか。甘えることもできるようになったし、人の意見を聞けるようにもなりました」

 すべて自分で背負うのではなく、周囲を巻き込み、互いの力を結びつけながら新たなチャレンジを成功させていく-。そのためにも、まずは目前の仕事に全力投球する。そこで勝ち取った小さな信頼や実績が、次の仕事を呼び込むことになるという。

新倉 「点を残していくようになったんです。何か興味があることがあった時に『これとこれがうまくいけば、つながるんじゃないかな』と思えるようになりました。そうするといつの間にか、線になっていることが結構多くて。あざとく点を残すんじゃなくて、ポジティブに気持ちよくということだけなんです。『これは先につながるかもしれない』とかは考えません。周囲の皆さんには助けられて、生かされていると思います」

 デビューから10年が過ぎ、ひとりの演奏家=アーティスト(A)というだけでなく、プロデューサー(P)として自身の音楽をどう世間に放っていくかにも、大きな興味があると言う。

新倉 「『新倉P』みたいなのがあるんですけど、結局アーティストの『新倉A』の方が強いんですよ。だからどうしても、やりたいことがあると『あれもこれも』と予算オーバーになってしまうことが多くて。プロデュースしたい気持ちがすごく強いから。でも、それは私の音楽家としても大事な部分で。自分の音楽をどうプロデュースしていくかは、大事にしています。今の課題は、それをビジネスにしていかなくちゃいけないということ。ビジネスとして赤字ではなく、黒字にしていくということ。そういう意味では感性が強すぎて、暴走気味になることもあるんですが(笑)」

 日本とスイスでじっくりと研鑽を積んだ結果、将来を嘱望される音楽家に贈られる「ホテルオークラ音楽賞」も受賞した新倉さん。プロデューサーとしての腕が鳴るのも、演奏家としての自身に活力がみなぎっている証しといえるだろう。点と点をしなやかにつないでいく、「新倉P」の次の一手を楽しみにしたい。

健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

〔文/構成:ココカラネクスト編集部 〕

新倉 瞳(にいくら・ひとみ)さん

1985年、東京都生まれ。幼少期を米国とドイツで過ごす。8歳よりチェロを始め、桐朋学園大音楽学部を首席で卒業。スイス留学後はバーゼル音楽院修士課程を最高点で修了。06年には「鳥の歌」をリリースし、CDデビュー。14年からはスイスでクレズマーバンドのメンバーとしても活躍中。17年2月には第18回ホテルオークラ音楽賞を受賞。

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