地獄から天国へ――T・ヘルナンデス、批判を熱狂に変えた「執念の逆転弾」【ドジャース回顧録 vol.11】
もしこのまま敗れていれば、ヘルナンデスは間違いなくこの試合の「戦犯」として記憶されただろう。
一方で、マウンドでは歴史的な光景が繰り広げられていた。先発の大谷翔平は、打者としては4打席連続三振と苦しんだものの、投手としては2回の失点以外はフィリーズ打線を圧倒。6回3失点9奪三振の粘投で勝ち投手の権利を手にする。
そして9回、クローザーとしてマウンドに上がったのは佐々木朗希だった。メジャー移籍後初となるポストシーズンのマウンドで、圧巻の投球を披露。メジャー初セーブを挙げ、ドジャースの「新守護神」としての第一歩を刻んだ。
しかし、この試合の主役を最後に奪い去ったのは、序盤にミスを犯したヘルナンデスだった。1点を追う7回、二死一、二塁の好機。打席に立ったヘルナンデスは、失った信頼を取り戻すかのような一振りを放つ。打球は右中間スタンドへと吸い込まれる逆転の3ラン。自らのミスを帳消しにするどころか、チームを勝利へと導く値千金の一発となった。
同メディアは「彼は敵地の観客を沈黙させただけでなく、ドジャースファンに自らの苦言を撤回させることになった」と、手のひら返しで称賛した。
守備での脆さと、それを補って余りある打撃の破壊力。25年のテオスカー・ヘルナンデスという選手を象徴するようなこの一戦は、ドジャースが「勝負強さ」で勝ち上がったポストシーズンの象徴的な一幕として、今もファンの心に刻まれている。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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