“岡田野球”とは何だったのか 66歳の名将が第二次政権で阪神に残したモノ 「普通にやればええやん」に込められた真髄
岡田監督の指示に奇策はない。それでも攻守で課した指令で阪神は変化を遂げた。(C)産経新聞社
「打てないもんに『打て』言うてもしゃーないからな」
23年のリーグ優勝の1つの要因とされたのが、打線が奪った四球の数の多さだった。494個はリーグトップ。岡田監督は「四球もヒット1本と同じ」と考え「ボール球は振るな」と簡単なようでなかなか難しい指令を口酸っぱく言い続けた。
結果、今季も四球数(441個)はリーグ1位。そして、野手陣が選んだ四球で得点につなげていく姿は自軍の投手陣にも好影響を与えたと感じている。守護神の岩崎優から聞いたことがある。
「味方の打線があれだけ四球を選んで得点に繋げているところを見てるし、こっち(自分たち投手)も四球にはより気を付けるというか。状況によって出してしまうこともありますけど、イニングの先頭を四球で出さないとか、そういうことはより意識するようになりましたよね」
勝敗を左右する局面で起用されることの多い救援陣はなおさらだろう。今季の投手陣全体の与四球323個はリーグ最少。「無駄な四球を与えない」を最も体現していたのが、ここ2年の阪神だったと言える。
守りの野球、一つの四球から得点に繋げる……。挙げていけば、岡田監督が2年間でチームに覚えさせたこと、そしてやりたかったことは数多くある。指揮官が常々口にしていた「普通にやればええねん」のごとく、そこに奇策は皆無。基本に忠実な野球をぶれずにやり続けることこそが勝利への近道と言っているようだった。
チームには佐藤輝明、大山悠輔、森下翔太ら魅力十分の大砲が顔を揃える。だが、彼らも毎試合アーチをかけられるわけではない。空中戦ではない“地上戦”でどれだけ得点を奪い、逆に防げるか。昨秋、キャンプ地の高知でリーグ優勝を果たしたチームの特色について触れた時の名将の言葉を思い出す。
「打てないもんに『打て』言うてもしゃーないからな。勝つためにどういう野球をした方が機能するかというかな。こういう風にやった方がチームが活気付いて勝てるっていう。それ(チームの特色)にうちはホームランは入ってないよな。(投手が)与えたフォアボールも少なかったわけやから。逆に(野手が)フォアボールを勝ち取ったいうかな。その辺が細かい野球っていうか大味じゃないよなチームとして」
勝つためにどうするか、どんな野球をしていかなければいけないのか――。ベンチで采配を振るいながら、その方法論を示していった66歳の指揮官。まだ20代のレギュラーも多い、若き集団に名将が残していったものは少なくない。
[取材・文:遠藤礼]
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