青学大から史上初の3年連続複数ドラ1輩出 NPBスカウトも唸る無名素材を育てる「少数精鋭」の指導環境とは?
高校時代は「無名」も“磨けば光る”好素材をスカウト
では、そんな青山学院大の強さの理由はどこにあるのだろうか。まず大きいのが的確なスカウティングである。この3年間でプロ入りした選手を見ても、高校時代にプロ志望届を提出すれば間違いなく指名されていたという選手は佐々木くらいで、常広や西川は全国的には無名の存在だった。
ただ、どの選手も将来性が高く、成長すれば面白い存在になるという選手たちばかりだったことは確かだ。そういった“磨けば光る”好素材をしっかり獲得している印象が強い。
4月に入学する予定の新1年生もU18侍ジャパン候補で、投打二刀流もこなす高いポテンシャルを誇る新井瑛太(滝川)、いずれも150キロに迫るスピードを誇る本格派右腕の宮口龍斗(智弁和歌山)、山田玲(浜田)、野手も下級生の頃からチームの中心として活躍している能美誠也(星稜・捕手)、金本貫汰(東海大相模・一塁手)、橋本友樹(報徳学園・遊撃手)など実力者が揃っている。
ただ、力のある選手は当然他の大学や社会人はもちろん、NPB球団も狙っており、獲得するのは簡単ではない。そんな中で青山学院大が選手に選ばれる理由として、NPB球団のあるスカウトはこう話してくれた。
「青山学院大が高校生に人気になっている理由としては少数精鋭というやり方が大きいと思います。他の大学では4学年合わせて200人近くいるチームもありますが、青山学院大は1学年あたり10人弱しか選手を獲りません。そのため力があれば1年生からすぐにリーグ戦でも起用されます。その中であれだけ毎年ドラフト指名を受けているということがさらに人気に拍車をかけているのではないでしょうか。
あとは安藤監督をはじめ、スカウティングの動きが早いですね。高校生でも1年秋に良ければ既にアプローチしているという話もよく聞きます。獲れる選手が少ないからこそ、より厳選しているというのもあると思います」
3月に行われる選抜高校野球の出場が確実視されている強打者についても、青山学院大が早くから接触しているという噂を聞いたこともある。NPB球団のスカウトが本格的な調査に動き出した頃には既に進学先が決まっていることも少なくないというが、青山学院大は、その中でも有望な選手へのアプローチがより早いことは確かだろう。
ただ、将来性の高い選手を獲得しただけで勝てるほど野球は簡単なものではない。前述したように高校時代は盤石なドラフト候補ではなかった選手を4年間でしっかり成長させている育成力も青山学院大の大きな強みとなっているのだ。前出のスカウトはこう話す。
「早い時は早朝5時台から練習をしています。だから我々スカウトも練習を見に行こうとすると始発の電車でも間に合わず、前日に近くに宿泊する必要があるほどです。全体練習の時間は決して長くはないのですが、早朝に始まる練習でも全員がしっかり集中しているのがよく分かりますね。このあたりは安藤監督やコーチの手腕だと思います。
あと、人数は少ないですが競争は激しいので、試合に出るためにいろんなポジションに挑戦している選手も多い。レギュラーメンバーや打順もそこまで固定されていません。誰にでもチャンスがある環境を作って、ポジションの高い選手たちで競わせるという循環が上手くいっているのだと思います」
2025年にロッテで新人王に輝いた西川も高校時代は内野手だったが、2年生まではリーグ戦でほとんど結果を残せず、外野にコンバートされてから才能を開花させている。また新チームでエースとして期待される鈴木も高校時代に肘の故障歴があり、まずはリリーフで登板して力をつけていった。選手の能力を伸ばしながら適性を見極め、より高いレベルに導く指導と環境があると言えそうだ。
このまま青山学院大の時代が続くのか、それに待ったをかけるチームが出てくるのか。2026年の大学球界において最大の注目ポイントとなりそうだ。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。
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