「正直、(育成契約も)考えた」――難病克服からの“進化”へ 困難を乗り越える阪神・湯浅京己の「今」

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再起をかける新シーズンは、春季キャンプでのチーム合流にまずは焦点を当てている。(C)産経新聞社

藤川新監督から投げかけられた言葉とは

 自身が45ホールドポイントで初タイトルを奪取した22年は矢野燿大監督、不振に苦しんだ23年からの2年間は岡田彰布監督、そして再起を図る来季からは藤川球児新監督が指揮を執る。新体制の船出となった10月22日の秋季練習初日に新指揮官とは挨拶を交わし、「慌てなくていいから」と声をかけられた。湯浅はその想いを振り返る。

「自分としては昨年と今年は何もできていないので来年こそはという思いもある。この気持ちは誰が監督になっても変わらない。リハビリをしっかりして、アピールしていくだけだと思います」

 当面の目標は来年2月1日のキャンプインに合わせたチームの全体練習への合流。そこから実戦復帰、開幕1軍へと歩を進め、「投げるなら1軍の良いところで投げたいので(同僚にも)負けないように」と今季は桐敷拓馬、石井大智らが担った勝利の方程式入りまで見据えている。

 契約更改会見後の囲み取材で、筆者は難病から復帰することの意味を聞いた。

「そうですね……、手術前から三嶋さん、福さん、岩下さんにはいろんなことも聞かせてもらって、すごいお世話になったので。すごく感謝しているし、今度は自分がそういう困っている人たちを勇気づけるじゃないですけど。そういう存在になれるように。1軍で投げることによって勇気づけられると思いますし、お世話になった方にも恩返しができると思う」

 病名が発覚してから手術に至るまで、湯浅は「胸椎黄色じん帯骨化症」からマウンド復帰を果たしているDeNAの三嶋一輝、中日の福敬登、ロッテの岩下大輝に当時の体験を聞き、復帰へ向けての助言ももらっている。さらに今もリハビリを支えてくれているトレーナーなど背番号65が1軍マウンドで腕を振ることで「恩返しができる」存在は少なくない。

 契約更改では1000万円ダウンの来季年俸3700万円でサインした。それでも育成への降格などはなく「(育成降格は)正直、自分も考えたこともありますけど、(支配下で)残してくれた球団のありがたみを感じながらキャンプからアピールできるように頑張りたい」と意気込む。

 困難を乗り越え、立ち上がってきたのは今回が初めてではない。入団以来、故障に苦しんで投げられない日々も経験してきた。だからこそマウンドに立てる喜び、幸せを噛みしめられる右腕。不屈の若武者が進化した姿で甲子園に帰ってくる日を待ちたい。

[取材・文:遠藤礼]

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