柳田悠岐に砕かれた一球に何を思う? 石井大智が日本シリーズ後に口にした“末恐ろしさ”「内容は昨年より落ちている」【阪神】

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石井と幾度となくバッテリーを組み、ピンチを乗り越えてきた坂本は、その凄みを体感している数少ない選手だ(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARAnext

相棒・坂本が明かした石井の“究極の準備”

 大きな武器だった直球とフォークに加えて、昨年から割合の増えたスライダーの精度向上、同僚と「チームマッスル」を結成するほどのトレーニング好きが好転してのフィジカル面での成長など進化した理由は1つに限らない。

 石井のほとんどの登板でコンビを組んだ捕手・坂本誠志郎が、“相棒”の凄みを体感した試合が、7月9日の広島戦だった。

 3-1で迎えた8回に登板し、二死三塁でサンドロ・ファビアンを迎えた。この局面でバッテリーがフルカウントからの9球目に選択したのはフォーク。外角低めから捕手の手前でワンバウンドしたウイニングショットに相手助っ人のバットは空を切った。

「大智(石井)は、あそこで一番良いところに投げるんですよね。あの場面、見逃されるフォークを投げるピッチャーは多いと思います。あの一球は大智の技術と力量でしかない。ボールゾーンにいく球種なので捕手としては四球も覚悟しないといけない。でも受けてみて、あのフォークを見逃せる打者はいないなと思いましたね」

 そして、坂本は続ける。

「大智は究極、マウンドでどうしようとかたぶんないと思うんです。ボールを投げる準備、身体の準備、メンタルの準備から大智はマウンドに上がるまでに全部終わらせてる。自問自答して、自分と戦ってマウンドに上がってきてる。だから勝負は終わってるんです」

 投げるボールの質は言うまでもなく、打者の分析、研究、自身のコンデョション調整、精神面の整え方など最上級の準備をやり切ってマウンドに向かうことが石井の最大の強みだと坂本は表現した。

 それでいて、現状に満足せず、全身から溢れ出てくるのは向上心。日本シリーズでの終戦から数日後、石井は早くも来季を見据えた。

「色々変えたい部分、変わりたい部分がある。今年のピッチングは数字的には良いと思うけど、内容は昨年より落ちている。(昨オフは)自分の身体の状態で諦めた部分もある」

 50試合連続無失点、防御率0.17など驚異的な数字はあくまで表面的なものに過ぎず、本人からすればまだまだ伸びしろを感じている。それが確信に変わったのが、甲子園で柳田に浴びた一発だったのだろう。

 虎の筋肉マスターいわく、この11月と12月は筋肥大の時期。重い器具をガンガン上げるために今は徐々に身体を温めていっているそうだ。キャリア最高に見えた1年は、完全無欠のリリーバーになるための第一歩。石井大智の最高到達点はもっと先にある。

[取材・文:遠藤礼]

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