三浦ベイスターズの躍進を支えた“心のプロ” 選手たちが求めた「いい話し相手」の計り知れない影響力【DeNA】
今秋のキャンプもチームに帯同している遠藤。相川体制が発足してからも選手たちから頼られる日々は続いている(C)萩原孝弘
同時に見据える“今”と“未来”
求められるのは、プレーヤーに対するアプローチだけではない。マネジメントサイドにも力を発揮する。特に短期決戦となるポストシーズンでは、「ここにピークを持ってくるプランニングが徹底される。こうすればこうなるから、選手はやってくれるはずというような」と首脳陣のメンタル作りにも言及する。
全てに「選手たちが“今”に集中できるように」との想いがある。だが、遠藤は「同時に“未来”も見続けながらプランしなくてはいけない」と明日以降の戦いにも目を向け、予測することも重要なポイントとして挙げる。今のベイスターズはその点においても「バランスも非常に取れています。去年と比べても」と全体の成長を体得しているという。
いまではすっかりチームに溶け込んでいる。そんな遠藤の手腕を選手たちはどう捉えているのか。
林は「別に答えを求めているわけではないんですよ。朝の気持ちを話したり、試合前はこんな気分でゲームに入っていきますなど、自分が思っていることを口にしているだけなんです」と明かす。特別なコーチングは何一つない。それでも「そういうことを言える存在。いい話し相手になってくれるんです」と気持ちを落ち着かせる、フランクな関係性が必要と語る。
また、「僕はメンタルが強いほうではない」と自己診断を口にする中川颯は「試合前に2人きりで一時間くらい相談に乗ってもらうこともあります」とより深く話し込むこともあるという。
「マインドフルネスという考え方を教えていただきました。目をつぶって音楽を流してリラックスするんです。頭の中がスッキリしますよ」
さらに「認知行動療法とか心理学的なこともやる」という中川は、遠藤の専門的な助言に自身のパフォーマンス向上に繋がっていると前を向く。
「自分を客観視して、マウンドに行く前はどんな気持ちだったのか、なぜその気持になったのかとかを整理していく治療法も試しました。僕一人ではできないことをいろいろ助言してくれます」
三浦監督は2025年シーズン限りでの退任を決めた。遠藤が就任してからいきなり2位となり、その後の3年間もAクラス(3位、3位、2位)をキープ。4年間で289勝269敗と20の貯金を作ることにも成功した。そうした“結果”を見ても、心のスペシャリストの存在が、三浦ベイスターズを縁の下の力持ちとなっていたのは明白だ。
厳しい勝負の世界に身を置く選手たちのメンタルを支える。あの手この手と模索しながらベイスターズを高みへ誘う男の貢献度は計り知れない。
[取材・文/萩原孝弘]
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