【エディージャパン検証】”現在地”を見せつけられたNZ戦の大敗 欧州遠征は炙り出しの機会に
エディーHCは試合後「経験値、感情のコントロールというのは教えられない」とコメントしていたが、感情をコントロールできなかった代償は大きく、後半4分までに連続して7つのトライを奪われ12-50と試合の大勢を決められてしまった。トライはほぼ全て、密集の近辺でHB団がデイフェンス陣を内側に寄せる仕掛けを施し、最後は大外に控えていたパワーランナーがフィジカルにモノを言わせてインゴールにボールをねじ込むというパターンで奪われた。残念ながら現時点のジャパンには、このシンプルながら強力な戦法を打ち破るだけのスキルが、フィジカル的にもメンタル的にもなかったと素直に認めるしかない。
セットプレーに目を転じると、サマーシリーズのマオリ・オールブラックスを大いに苦しめたスクラムはこの日はターンオーバーこそ奪われなかったものの、互角以上に組まれてしまった。ジャパンと対戦する際、スクラムで優位に立たれると、ジャパンというチーム全体の意気が上がる傾向にあるという特色を見切り、見事にその芽を潰しにきたNZはさすがだというしかない。
一方でラインアウトは安定していた。1本スチールを喰らったがこれは相手のジャンパーの読みとジャンプの高さを褒めるべき。相手ゴール前でロングスローを選択し、意図したプレーヤーがキャッチできなかったというミスが1本あっただけで、進歩の跡がうかがえた。前半に奪った2本のトライがいずれもラインアウト基点であったことを考えてみても、今後ラインアウトからのムーブメントを増やしていくべきであり、そのためにはまず安定したマイボールの確保が前提となる。さらなる向上を望みたいところだ。
かすかながら光明もあった。一つはFB矢崎の成長と経験値増。スピードを活かしたゲインが何度か見られた。後半26分にはゴールライン間近まで迫りながらダミアン・マッケンジーに止められてしまった。試合後のインタビューで「あそこでトライをとれなかったのが自分の現状。純粋に悔しい」と語っていたが、自身に何が足りず、今後どのように修練していけば良いのかを文字通り実感できたのではないか。
後半28分にトライを奪った右PRオペティ・ヘルにはインパクトプレヤーとして面白い存在になる可能性がある。スピード感にはやや乏しいものの、意表をついたコース取りと、ダミアン・マッケンジー相手にステップを切ってタックルをかわすセンスは今までのジャパンにはなかったタレントだ。「本職」のスクラムには課題があるが、エディーHCの指導でどう伸びていくか、大いに期待したい。
ジャパンはこれから欧州遠征に出発し、フランス、ウルグアイ、イングランドと対戦する。まだまだエディーHCが理想とする超速ラグビーの完成には時間がかかりそうで、苦戦は必至の状況下ではあるが、現時点での実力を測り、課題を炙り出すには良い機会となる。実り多い欧州遠征になることを期待したい。
[文:江良与一]
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