開幕迫るセンバツで必見の強打者 プロ注目の“打率6割の怪童”モイセエフ・ニキータは何が凄いのか?【高校野球】
6割に迫った高打率は図抜けた対応力の高さの賜物
そして、もう一つの大きな特長は、試合の中で問題点を修正できる能力が高さだ。明治神宮大会の初戦、対高知戦でも第1打席では相手バッテリーの変化球攻めに対してタイミングが合わずに三振に倒れたが、第2打席以降は少しタイミングをとる動きを小さくしてしっかり対応。ツーベースと犠牲フライを放っている。秋季大会トータルで6割近い打率を残せたのも、図抜けた対応力の高さの賜物と言えるだろう。
また、大事な場面で打席が回ってくる巡り合わせの良さと、好機を逃さない勝負強さも彼の売りの一つだ。先述した対高知戦の犠牲フライも9回に1点差で回ってきた場面の同点打であり、また選抜出場に向けての大一番となった東海大会の準決勝、対宇治山田商戦でも9回裏に同点のタイムリーを放っている。
偶然という見方もできるかもしれないが、こういった“運”を呼び込めるスター性を彼が秘めているのは確か。「自分が打ちとられたら負け」という場面で結果を出せる集中力の高さというのは、なかなか教えて身につくものではない。実際、プロのスカウト陣からも、このような目に見えづらい部分を評価する声もある。
打撃ばかりに注目が集まるが、センターの守備範囲の広さと肩の強さも備えている。対宇治山田商戦ではダイビングキャッチを見せるなど、バッティング以外でも観客を沸かせるプレーができるというのも大きな長所である。
初の全国の舞台となった明治神宮大会でも、堂々と実力を発揮しただけに、甲子園でも積極果敢なプレーで観衆を沸かせてくれると期待したい。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。
【関連記事】【センバツ】「死のブロック」に大阪桐蔭、作新学院ら優勝経験8校中5校! いずれも1回戦屈指の好カードに
【関連記事】NPB複数球団がマークする宗山塁の実力は? 高校生は長距離砲がズラリ 24年ドラフト候補10選【野手編】
【関連記事】「豊作」と言われた18年ドラフト 5年後の答え合わせ 意外な出世頭とは