【女子バレー】アクバシュ新監督の改革は進んでいるか? 苦しい展開でも表情はいつも前向き “攻めたミスはオッケー”がもたらす効能
彼女らフレッシュな面々が躍動できているのも、チーム内に積極果敢な姿勢が浸透しているからこそ。アクバシュ監督は就任してから常に、選手たちへ「ミスを恐れずにプレーすること」を促してきた。例えば、サーブもその一つ。シチュエーションによっては相手コートに“入れにいく”サーブを打ってしまうこともあるわけだが、それを良しとせず、とにかく“攻めて打つ”ことを要求する。その結果がミスだったとしても、攻めたサーブならばオッケーなのだ。
チーム全体がそうした姿勢だからこそ、選手たちは思いきってプレーすることができている。また、試合では苦しい展開になったとしても、選手たちの表情はいつも前向きだ。フレッシュなアタッカー陣を操るセッターの関菜々巳(ブスト・アルシーツィオ/イタリア)自身、相手にブロックシャットされた場面でも「以前なら『私のトスが悪かったのかな…』とあたふたしまっていたのが、『それでも今のはここがよかった。次はこうしよう』と切り替えられるようになりました」と語る。劣勢でも心が折れることなく戦い抜く、それは今の女子日本代表の特徴といえるだろう。
ただ予選ラウンド第3週のブラジル戦では、相手の攻守で高いクオリティを前に状況を打破できず、完敗を喫した。それでも、打開策として送り出された秋本や北窓がアタックを決めきる場面も見られた。その北窓は第2セット序盤、7-11からコートに立つと、最初のプレーで得点を決める。相手の2枚ブロックをさらりとかわしてボールを落とす技アリのアタックに本人も「強く打とうと思ったのですが、絶対につかまると感じたので。相手(のレシーバー)も下がっていたので、そこを狙いました」と告白。「冷静にプレーすることで、自分のいいパフォーマンスが発揮できる。そのことをこの試合でも実感しました」と手応えを感じていた。
一方、この試合でもリリーフサーバーとして起用された深澤は試合後に涙を浮かべた。それはこの第3週の自身の出来が満足いくものでなかったこと、さらにはブラジル戦でチームが劣勢の中、「周りが活躍しているのに、自分がサイドアタッカーとして試合に出る選択肢の一つになかったのが悔しい」というふがいなさからだった。サーブに関して「自分が点数を取りにいく、というよりも、まずはブレイクをしっかり、と弱気になっていました」と自己採点する深澤は「ファイナルラウンドに向けて、もう一度しっかり修正していきたい」と強く誓ったのであった。
予選ラウンドを振り返り、アクバシュ監督は「若い選手を起用することで経験を積ませる狙いがありました。ポテンシャルがあることは素晴らしいですが、やはり大事なのは国際レベルの試合を経験することですから。その点において、全員が成長しています」と語る。日の丸のステージで台頭しつつある彼女たちは、ほかの誰でもない本人が一番に手応えと課題を実感している。その伸びしろが成果として表れたとき、さらに強くなった女子日本代表の姿がそこにあるに違いない。
[文:坂口功将]
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