「中国との差は縮まっている」 “王国”の牙城を崩す日は近い? 元世界選手権ベスト8・加藤美優が語る卓球日本女子の現在地

現役時代の体験も含めて日本代表の現在地を語ってくれた
――相手の迫力とかそういうのを最後に感じてしまうのでしょうか?
それまで競ってはいるので気迫で負けているとかはないはずなんです。それが中国選手の底力なのか、なぜか取れない。取りたい時に取らせてもらえない。その要因はわからずじまいでしたが。
――技術的には中国選手はどのあたりが強いですか?
ラリーがとにかく強いですね。サービス、レシーブに関しては実はそれほどでもなくて、そこに関しては日本選手のほうが上手いと思います。中国選手のサービス、レシーブはすごくシンプルですが、日本選手は色々と工夫をするし、選手それぞれで個性があります。
ただしラリー力はかなり違いますね。中国選手と対戦すると本当にビックリして笑っちゃうようなボールが来るんです。「こんなこと自分はできない」というボールが。日本選手や他の国の選手との対戦ではそういうボールは来ません。ラリー力に関しては差があると思います。
――しかも中国は選手同士の練習でそういったボールを受け慣れているでしょうし、ラリー力の差を縮めるのはなかなか簡単ではなさそうですね。
日本選手も同じ質のボールを受けられたら良いですが、なかなかそういう環境、機会を作るのは難しいですね。日本女子も男子選手と練習することもありますが、中国女子のトップのボールはやっぱり少し質が違います。
――世界ランク1位の孫穎莎選手はやはり他の選手とはさらに違う印象ですか?
私も対戦したことがありますが、本当にすごいボールが来るのでビックリします。「決まった」と思ったボールが、お手本のような飛びつきフォアストレートで返されてしまう。もうお手上げというか、「こんなことできるのか……」という気分です。とにかくフィジカルがすごいからどこに打っても決まらないし、すごいボールがあると思うとこっちも怖くなってしまうし、彼女はそこまで身長は高くないのですが、コートで向き合うとすごく大きく感じる選手ですね。
――攻略法はあるのでしょうか?
さすがに明確な穴はないですね。疲れが見える時に日本選手も競ったりしますがコンディションが万全な時はかなり厳しい相手です。ただしレシーブに関してはそこまですごいボールが来るわけではないので、サービスで崩すことがひとつのポイントにはなると思います。
――孫穎莎選手含め、中国選手に勝つために日本選手が身につけるべきことは何でしょうか?
繰り返しになりますが、日本選手が勝つにはサービス、レシーブで変化をつけて優勢に持っていくことが大事です。ラリー勝負になったら簡単には勝てないので、その前にいい形を作る必要があります。ただし日本選手のフィジカル面も向上しており、最近の試合を見ていても互角のラリーが増えています。ラリー力の差が少しずつなくなっているので、そのうえでサービス、レシーブで上回れば、勝つチャンスはかなり高くなるはずです。
――昨年はアジア選手権の団体で中国を倒しましたが、今後は世界選手権やオリンピックでも中国を倒す日が来る日が来るかもしれませんね。
そうですね。まだまだ実力では中国のほうが上ですが、選手のサポート体制で考えると日本も恵まれていると思うので、今後も差は着実に縮まっていくはずです。張本選手など日本の若手選手もどんどん育っていますし、ビッグゲームで日本が中国に勝つ可能性は十分にあると思います。
[取材・文:渡辺友]
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