「一番になりたい」――オフに断念したメジャー移籍、それでも消えない渇望 才木浩人が歩む“球界最高投手への旅路”【阪神】
飽くなき向上心を抱き、今オフも淡々と進化の道を歩んできた才木(C)産経新聞社
ハワイでの優勝旅行も不参加。模索し続けた土台作り
大きな夢はいったん、胸にしまった。阪神の才木浩人は今季もタテジマのユニホームに袖を通し、先発ローテーションの一角を担う。
「見てる人全員が納得できるような数字を残したい」
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今季にかける言葉に一層の力がこもった。それには理由がある。
昨オフ、才木は球団にポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ移籍を直訴したものの、球団が容認せずに行使を断念した。2020年に右肘のトミージョン手術を受けてから復帰したのは22年で、ローテーションの一角に座ってフルシーズンを回ったのは、24年からの2年間。周囲からは時期尚早という声もなかったわけではない。
初めて、“海の向こう”にある目標を公にしたのは、24年12月の契約更改の場。将来的な挑戦の意向も口にした。日本人がMLB球団と大型契約を結ぶことも珍しくなくなった昨今だが、才木の抱く憧れは金銭面とは別のところにある、混じり気のない向上心に他ならない。
「入団した時から『いつか挑戦してみたいな』という気持ちはありました。その思いが強くなったのが、手術明けで復帰してからです。違う環境でプレーすればもっと進化できるかもしれない」
常に「ナンバーワン」にこだわってきた。だからこそ、才木にとって、メジャーという舞台は避けては通れない場所だったのだろう。
ただ、26年シーズンも阪神でプレーすると決まった瞬間から才木の視線は、すぐに己の成長に向けられた。昨年12月上旬にあったハワイでの優勝旅行には「時間が足りないので」と不参加を決め、トレーニングに専念した。
オフ期間に着手したのが、“低酸素トレ”だった。「知見のある方に紹介していただいて。すごく良さそうだな」と、標高2500mや3000mといった高地環境下で行なう低酸素トレーニングを体験できる兵庫県内の施設に足繁く通い始めた。
「やっぱりしんどいっすよ。酸素薄いので。頭痛くなったり、目がチカチカしたり」と漏らすように簡単な鍛錬ではない。それでも、才木が心身を休めてもいいオフシーズンに平地では感じることのできない痛みや症状で自身を鍛え上げるのには明確な理由があった。
「野球ってやっぱり無酸素運動なんで、球数投げても(持久力が)落ちないようにというのを低酸素の施設でやると効率よく上がる」
25年は、村上頌樹との“Wエース”でチームを支えながら12勝を挙げ、防御率も2年連続の1点台(1.55)でキャリア初の個人タイトルも手にした。そんな中でも数字を落としていたのが、イニング数だった。
実は24年の167回2/3から157回に減少しており、イニング別で見れば、7回に最多の10失点を喫し、中盤から終盤にかけてのスタミナ面に課題を感じていた。
「効率が良い。イニングを投げても疲労しにくい身体がつくれるかな」
30分動くだけで2時間の運動効果があるとも言われる低酸素トレーニングを土台に更なる進化を図ったのもうなずけた。







