【ラグビー】ウエールズ戦の逆転劇で上昇気流に乗れるか 不用意なミスを減らすことが「超速AS ONE」への道筋に

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 それでも、ジャパンは全く諦めていなかった。この後もハンドリングミスや、接点でのスチールなどで再三ウエールズにボールを渡してしまうのだが、スクラム、PK後のラインアウトで頑張ってウエールズに追加得点を許さなかったのだ。

 特にスクラムが見事で、ターンオーバーこそなかったものの、全てのスクラムで優位に立ち、ウエールズFWのスタミナを奪うとともに、チーム全体の士気を低下させなかった。後半、ウエールズは明らかにスタミナ切れを起こしていたが、この時間帯に優位なスクラムを組み続けたことが効果的なボディーブローとなったようだ。

 スクラムでスタミナを奪ったとはいえ、後半の後半になるまで細かいミスが頻発し、自軍に傾きかけている流れを完全に引き込むことができなかったのは大いに問題だ。まだまだ、個人のひらめきをフォローし切れるほどには「超速AS ONE」は成熟していない。李やファカタバ・アマトが瞬間的なひらめきでゲインしたものの、周りのプレーヤーがその動きについていけず、結果的にスチールされてボールを失うシーンが散見された。

 チーム状態が最悪な上に、最高気温33℃、湿度68%という過酷な環境下でバテバテだったウエールズが相手であったが故に致命傷とはならなかったが、ランキング10位以内の強豪たちは、こうしたミスやスキをついて逆襲し着実に得点に結びつける技術と、ミスを取り戻そうと勢い込んで押してくるジャパンのスクラムを跳ね返す強さ、あるいはスクラムの力をうまくいなす技術を身につけている。この試合にしても、一歩間違えば、大敗していてもおかしくはない頻度でミスが出ていた。

 試合は、後半19分に中楠がトライを奪って14-19と追撃態勢を整えると、24分には李がPGを決めて17-19。そして30分には敵トライライン前5メートルのラインアウトからモールを押し込み、最後はタイミングよく参加した途中出場のWTBハラトア・ヴァイレアがインゴールに雪崩れ込んで逆転、ゴールも決まって24-19。李はこの日4回のキックのチャンスを全て決めるスーパーブーツぶりを見せた。

 そしてそのままノーサイド。「勝利は全てを癒す」という言葉を改めて実感した。とりあえず、第一戦はなかなかいい状態で勝ったが、ウエールズとは来週にもう1回、対戦することが決まっている。この試合で出た課題を一つでも解消し、「勢いだけではない」戦いで連勝を狙っていただき、胸を張って「ハイパフォーマンスユニオン」を名乗れるチームに仕上げていただきたい。





[文:江良与一]

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