「やれることは全部やる」ハマの不死鳥が見据える“完全復活のその先”――国指定の難病も乗り越える三嶋一輝の「現在地」【DeNA】

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決して折れず、淡々と上を見据え続ける三嶋。その胸中はいかに(C)萩原孝弘

生命線となった「カーブ」 そのワケは?

 結果は出ている。それでも三嶋は、投球のより詳細な側面にも目を向ける。そして、「正直、出力は、自分の良い時と比べると出ていないのはある」と現実を受け止めつつも、「しっかりとバッターとは勝負できていますから。いままで打たれているヒットも捉えられていませんからね」と勝ち気な一面を隠さない。

 生命線となっているのは、「カーブ」だ。

「もともと投げてはいたのですが、実際にカチンって打たれていないんですよ。まっすぐと速いスライダーのイメージの中で、いいアクセントにして、邪魔なボールになればいいですよね」

 カーブはポピュラーな変化球だが、その使い方を理解し始めたのは“怪我の功名”でもあった。22年のオフに発症した「黄色靱帯骨化症」から復帰する過程で「軸足に体重が乗らない」という課題に向き合った三嶋は、「カーブを投げているときが一番いいフォーム。相乗効果で他の球でも良くなっていけばいいですね」と明るく語る。

 靭帯が骨化する国指定の難病からの復帰を目指した三嶋を見続けていた小杉陽太投手コーチも、もがき続ける35歳の姿に胸を熱くする。

「疲労の蓄積もあり、身体にいろいろな負担がかかっていて、なおかつ黄色靱帯の手術もして……。術後もいろいろな努力をして日々過ごしてきた中で、新しい三嶋一輝を作っていこうっていうマインドに変わっていったと思うんですよね。アーリーワークでランニング量を増やして、体組成にも気を遣って管理しながらファームで過ごしていたからこそ、コンスタントに良い結果も出せていたと思います」

 そんな小杉コーチも、カーブを駆使したスタイルの構築に、次のように評価する。

「カーブがすごく良かったので、スライダーと曲がり球の割合を増やして、アクセントの意味でフォーシームを投げる。投球の割合を変えたりもしています。スピードも150を超えるボールはないですけれど、あれぐらいの力感でそれなりの球速は出ますし。149キロが出たときも別に出そうと思って出すのではなく、結果的に出ているのでバッターはそのギャップにやられると思いますね」

 緩急を駆使できるようになり、打者を幻惑する効果も産んでいる。ただ、元々パワーピッチャーだった三嶋を知る小杉コーチは、「でも、このスタイルを受け入れるのは、なかなか難しいことだと思います。それを成しえていまに至っていることは、冷静に自分を見られていること。本当に素晴らしいです」と変化を恐れないマインドに敬意を払った。

 ストレッチに、身体のケアと、かつてのようにすんなりとリカバリーはできなくなった。自身の登板を終え、ゲーム終了から約1時間半は必要とする。それでも三嶋は「ポンポンと3人で終われなかったことで、逆に次のステップを踏みやすい。すんなり抑えていたら、それはそれで不安だったかもしれないしって捉え方をしたり」と心と身体を整え、次に備える。そして、「明日も朝からピラティス行きますよ。そしてまたスタジアムに来て走ります。本当にやれることは、全部やります」と己との約束を守り、再び戦いの場に向かうのだ。

 どん底を味わってきた。右肩の怪我から復活した直後に難病を発症。幾多の壁が三嶋の前に立ちはだかった。それでもハマの17番は完全復活のその先を見据えてきた。

 前人未到の境地へ向け、不死鳥の羽は強く大きくしなやかに、動き続ける。

[取材・文/萩原孝弘]

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