「選手寿命は短くなってしまう」――万能型リリーフを変えた藤川球児監督の“気づき” 24歳の高卒左腕が覚醒した理由【阪神】

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阪神の進撃を支える強力投手陣の中で安定感抜群の投球を続ける及川(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARAnext

「誰が見てもえぐい」と助言を仰いだ好投手の存在

 及川の投球フォームは「横の動き」が強いためブレが生じるケースが多かった。“横振り”は対左打者の場合に有効に働くことはあるが、対右打者において不安定さを生んでいた。

 そこでオーソドックスな「縦の動き」を土台にし、右打者にも安定したパフォーマンスを発揮する。それがキャリアにプラスに働くと藤川監督は指摘。これに及川自身も「その部分を意識してやってきた」と授かった貴重な助言を生かすべく、新フォームの構築に取り組んで冬を越した。

 成果ははっきりと数字に表れている。23年は対左に.162、対右が.296と被打率に極端な差があったが、今季は対左が.130、対右が.173(24日時点)と高いレベルで偏りが無くなっている。単なる「左キラー」からの脱却に成功した及川は、ワンポイントではなく1イニングを任せられる存在に進化した。

 そして、快投を支える大きな要因となったのが、“新球”の存在。同じく23年と比較して大きく割合が増えた球種、「カットボール」である。

 33試合に登板したシーズンで1球も投じていない球種だったが、今季は約20%と配球の1つに加わった。一番の武器であるスライダーが約25%であると考えれば、本人の中でも自信のあるボールになっているのは言うまでもない。

 もっとも、カットボールは、完全な新球ではない。昨年も1軍のマウンドで投じているが、完全習得とはいかず。飛躍的に精度が向上したのは、チーム屈指の“使い手”に教えを請うたことが大きく影響した。

「誰が見てもえぐい投手。聞かない手はないので」と、及川が助言を仰いだのは、同じ左腕の高橋遥人。握り方やリリースする際の意識などを教えてもらい、自身の感覚とすりあわせた。

 一般的にスライダーより速く、鋭く曲がるカットボール。直球と同じ軌道に“偽装”することで打者を打ち取るケースが多いが、及川の習得したそれは少し違う。

「カットに関しては直球と同じに見せるイメージではなく、曲げに行くぐらいの気持ちで投げています。自分にはカットと同じ球速帯で沈むツーシームがあるので。それと対になるように意識しています」

 そう意識を語るカットボールは、ツーシームとの相乗効果も生まれる球種として「途中まで同じ球速で逃げていくので。そこは効いているのかも」と大きな武器になっている。

 昨年まで少なからず胸の中にあった先発挑戦の思いも今は一端、封印した。だからと言って、リーグ屈指の左のリリーバーになりつつある今の立場を安泰とも思っていない。

「ゼロで抑えることが仕事なので。内容も求めつつですけど、内容が悪くてもゼロで帰ってくることを継続してやっていきたい」

 勝利の方程式を担う気概も備わってきた24歳は、ブレークの1年を一気に駆け抜けるつもりだ。

[取材・文:遠藤礼]

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