ドイツ古豪で“最年少守護神”となった21歳の資質 日本代表DFが「相当なタレント」と唸る長田澪の今【現地発】
アンダー世代のドイツ代表に名を連ねる長田。そのポテンシャルはブンデスでも屈指だ(C)Getty Images
ブレーメン首脳陣の揺るがなかった長田への信頼
選手は資質だけではトップレベルに達することができない。成長するための環境も必要となる。長田の現状を見ていると、フライブルクの正GKノア・アトゥボルとシンクロする点が多いように思える。
現在23歳のアトゥボルはフライブルクで正GKとなって今季が3シーズン目。U-23代表を経て、今年はドイツA代表にも招集された新進気鋭の若手だ。
3年前、当時の正GKだったオランダ代表マルク・フレッケンが退団した際に後継者として、U-23チームからアトゥボルを昇格させることに首脳陣は誰も異を唱えなかったという。フライブルクのスポーツディレクターを務めるクレメンス・ハルテンバッハは、「我々はフライブルクの道を進む」と語り、クリスティアン・シュトライヒ監督も「我々には優れた育成がある」と繰り返していた。
抜擢当初は不安定なプレーが続いた。U-23でプレーしていた3部や4部に比べ、ブンデスリーガ(1部)はあらゆるスピードとクオリティが違う。シュートに触れず、相手に打たれたシュートがどんどん決まってしまうかのような感さえあった。
その時点で移籍してしまったフレッケンの技量の差はあまりに大きく、また、控えGKには経験豊富なフロリアン・ミュラーがいたために、記者会見ではフライブルクの地元記者から正GK交代の可能性についてとわれることもあった。しかし、シュトライヒ監督はアトゥボルへの信頼を全く崩さずに、常に落ち着いた口調で切り返していた。
「私は17年間も育成指導者をしていた人間だ。そしてトップチームでも若い選手たちを見てきた。ミスをするのは普通の成長へのプロセスだ。我々はフライブルクだ。GKがミスすることもある。経験豊富なGKでもミスをする。選手と話をして、ビデオを見て、次につなげていく。ミスが起こるのは腹立たしいが、サッカーとはそういうものだ」
シュトライヒ監督の言葉に嘘がないのは、ドイツ代表にまで駆け上がったアトゥボルの成長ぶりを見れば誰にでもわかる。彼は試合を重ねるごとにプレー判断のスピードと精度がアップ。いや、1部のスピードに順応してきたといった方がいいだろう。鋭いセービングでチームを何度も救う活躍を見せている。PKストッパーとしても有名で、現在5連続でPKストップを記録している。
ブレーメンの首脳陣も、フライブルクと同様に若き長田に対する信頼を疑う素振りを一切見せなかった。ドイツ国籍も持つ21歳は、そんなアトゥボルやバイエルンの新鋭GKヨナス・ウルビヒと並び、ドイツ国内で将来を期待されている。
一方で日本国籍を持っており、日本代表でのプレーを決断する可能性も普通に考えられる。「代表を選ぶ」というのは極めてセンシティブな問題だ。様々な要素が絡み合い、本人もその時にならなければわからないことだってたくさんあるだろう。
だが、それもまだ先の話。いまは日々精進と向き合うことが何よりも大事だと本人も口にしている。選手として、人間としての成長と向き合う長田のこれからを、温かく見守りたいではないか。
[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]
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