衝撃ダウンに見た怪物の「人間味」 井上尚弥とネリの激闘を“第二の師匠”に訊く「あれは あれで、今後の糧になる」

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勝負の分かれ道となったネリの反応

 モンスターのダウンに「人間味」を見ていた須佐氏は、「2ラウンド目以降、地に足のついた戦い方が出来ていた」と指摘。普段と異なる井上の姿を見ていた。

「入場の時にパフォーマンスをして、いつもよりも気合が入っていたと思う。観衆を目の前にした時の緊張と、『絶対に倒さなければいけない』という使命感もあって、初回の力みに繋がっていたと思います」

 実際、当人も序盤の“力み”について「東京ドームでやることに対してものすごいパワーをもらっていましたけど、振り返ると、プレッシャーもあったんだなと。浮足立つような部分があった」と語っている。須佐氏の言う通り、気合が空回りしかけていたのである。

 もちろん、ダウンを受けたネリの対応も勝負の分かれ道となった。帰郷後に地元メディア『Global Comunicacion』のインタビューに応じた29歳のメキシカンは、「正直、『この男はなんて簡単に倒れるんだ』と思った」と吐露。そして、「すぐに仕留めようとしたのが間違いだった。そこから俺はガードが疎かになったんだ。12ラウンドもあることを思い出して、時間をかけるべきだった。あんな大きな試合だったからプレッシャーは半端じゃなかった」と赤裸々に明かしている。

 各国メディアのパウンド・フォー・パウンドでも1位にランクされ、“世界最強”と言われて久しい井上。そんな偉才をもってしても、東京ドームという大舞台に飲み込まれかけた。だが、須佐氏の言うように、窮地から冷静さを取り戻し、盛り返した姿には絶対王者の矜持も滲み出ていた。





[文/取材:羽澄凜太郎]

【解説】須佐勝明(すさ・かつあき)

1984年、福島県生まれ。会津工業高校から東洋大学へ。2012年、自衛隊体育学校所属時にロンドン五輪に出場。ロンドン五輪ミドル級金メダリストの村田諒太は東洋大学の1学年後輩にあたる。株式会社AYUA代表取締役。日本ボクシング連盟理事。日本オリンピック委員会ハイパフォーマンスディレクター。SUSAGYM会長。アジアコーチ委員会委員長。共同通信社ボクシング評論担当。会津若松市観光大使。ほか。

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