WBC早期敗退後にNPBが急ぐべきは“リスク”も潜む「ピッチクロック導入」なのか 「飛ばないボール」の議論を含めた日本球界が模索すべき改革の道
日本代表の敗退を受け、さまざまな議論が飛び交う中でピッチクロックも話題となった(C)Getty Images
米医師が研究したピッチクロック導入のリスク
野球日本代表「侍ジャパン」が、史上ワーストとなるベスト8で姿を消したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。連覇を期待された中での早期敗退を受け、“ある議論”が沸き上がった。それは「ピッチクロックをNPBでも取り入れるべき」というものだ。
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確かに理には適っているのかもしれない。このWBCでも、NPBでは適用されていない慣れないルールに戸惑う選手も見られた。そうした中で、選手たちからも導入を求める声が目立ち、大谷翔平も米スポーツ専門局『Sports Net LA』などの取材に対して「『我々は我々の野球をするんだ』と思っているのであれば、別に変える必要はない」との言葉とあわせて、「世界で勝ちたいなら、導入するべきだともちろん思う」と語っている。
そもそもピッチクロックは、テレビ視聴者数増加を見込んだMLBが、試合時間短縮のために2023年シーズンから実施してきた革新的ルールだ。その効果は抜群で、試合時間は導入前から3年連続で2時間40分以内をマーク。昨季も平均2時間38分となった。
無論、NPBでも導入に向けた検証や議論こそされてきたが、本格化するには至っておらず。選手たちが苦心した今大会は、不慣れなルールに起因する“問題点”が表面化し、一気にハレーションが生じた印象だ。
ただ、メリットがあれば、デメリットもある。ピッチクロック導入後に投手に故障を抱えた投手の割合も見逃してはいけないだろう。米専門メディア『MEDPAGE Today』のジョン・ゲーバー氏によれば、ピッチクロック導入以前の4シーズンよりも先発投手に肘内側側副靭帯(UCL)損傷するケースが増加したという。
ニューヨークのプレスビテリアン病院に勤めるマイケル・アンドリュー=マストロイアンニ医師のまとめた研究結果にクローズアップしたゲーバー氏は「野球の戦略における傾向も影響している可能性がある。先発投手が100球以上投げることは稀で、9イニングを投げ切ることはほとんどないが、球速の高速化も原因となっている可能性が高い」と指摘。その一方で「シーズン序盤から投手のUCL損傷による離脱が多く見られ、とくにリリーフ投手よりも先発投手にその傾向が顕著であった」と論じた。
「ピッチクロックが直接的な原因であったかどうかは、近年のMLBが様々なルール変更を実施し、戦略そのものが大幅に変化していることから、依然として議論の余地がある。ただ、ピッチクロック導入前の4シーズンにおいて、UCL損傷は4月から10月のシーズンを通じて、月平均2件から5件の範囲で比較的均等に発生していた。しかし、ピッチクロックが導入されると、異なる傾向が見られた。とくに2023年は5月だけで10件と急増した。その後はひと月の発生件数は落ち着きを見せたものの、24年の総件数は23年(60件)を超え、25年も統計的には増加が見られた」
この結果についてアンドリュー=マストロイアンニ医師の研究グループは、「試合のペースを速めるルールは、屈筋、回内筋群の疲労を増大させ、筋肉の回復を妨げ、怪我の発生リスクを急速に高める可能性はある」とも指摘している。







