【現地発】いや、堂安律は足を止めない 名門バイエルン移籍も囁かれる日本代表MFが下すべき“決断”は何か?「このままじゃダメ」
日本代表のレギュラーでもある堂安。1年後に控えるW杯に向けて求められるものは何か。(C)Getty Images
W杯を見越した“現状維持”のメリットも大きいが…
では、堂安にとって最適な決断とは何だろう? 誰もが知っているように、来夏にはカナダ、メキシコ、アメリカでのワールドカップ(W杯)が開催される。22年のカタールW杯ではグループステージでドイツとスペインを相手にゴールを決め、センセーショナルなアピールをした堂安には、今大会も日本の重要な戦力としての活躍が期待される。
フライブルクは24-25シーズンに、直近4年で3度目となるヨーロッパリーグ出場を決めている。23-24シーズンには決勝トーナメント1回戦でプレミアリーグの古豪ウェストハムを撃破。市場価値総額でウェストハムの4億4600万ユーロと比較して、フライブルクのそれは半分以下の1億8900万ユーロと大きな開きがあったが、試合ではその差を感じさせないチームとしての完成度を見せていた。
そんな大舞台での試合後に堂安が語っていた点は、いまの成長に繋がるものだった
「セカンドボールへの対応は、監督がすごく口酸っぱく言っている。特にプレミアリーグクラブだとやっぱりフォワードに良い選手がいる。何の意図もないボールから起点を作られて、チャンスを作られている場面がグループステージでもあった。だからリスク管理だったり、中盤の選手が下がるというのを意識しました」
サッカーにおけるチーム力とは、個々の能力をただ足し算されたものではない。互いの良さを引き出し、相手の良さを消すための駆け引きと繋がりの中で、自らの力を何倍にも広げ、相手の特徴をギュッと抑え込むこともできる。ピッチ上のその術を知っている選手がいるかいないかが、試合の流れにもたらす影響は計り知れない。
フライブルクにおける堂安のステータスは極めて高い。「僕の言葉を、みんなが尊重して聞いてくれる」と本人も口にしている通りだ。ゆえにワールドカップのみを考えれば、主力として活躍できるクラブで充実したシーズンを過ごし、心身ともに万全のコンディションで臨めるメリットは大きい。
ただ、堂安がそれをよしとするか。彼はハングリー精神にあふれ、常に自身の成長を考えている選手だ。足を止めることは考え難い。
その意識の高さが現れる時があった。24-25シーズンの第33節でフライブルクはキールに勝利し、5位以上を確定させた。当然ながら試合後のチームはお祝いムード一色となった。その喜びはわかる。ただ、堂安はすぐ次へと気持ちを切り替えていた。まだ1試合残っている。CL出場のチャンスがあるんだ、と。
シーズン中には、そんな上昇志向を感じさせるコメントをよく残していた。
「上を目指すならこのままじゃダメ。フライブルクがこの2、3年で見せたパフォーマンスを考えると、やっぱりもっとステップアップしなきゃいけない。もちろん、3、4年前のフライブルクならこれでハッピーでいいかもしれない。けど、自分がいるこの3年間でさえ、成長を感じるクラブの中で、自分の中では満足しちゃいけないと思っています」
第21節のハイデンハイムとのホームゲームを1-0で勝利した後に、鋭い視線とともにそう語っていた。そうした言動からも堂安は自分をもっと追い込み、己の限界値をさらに引き上げる戦いを常に渇望しているはずである。
もう時が来たのかもしれない。さらなる飛躍のため、新しい環境に身を置く時が。「うまくいかなかったらどうしよう?」という不安は、堂安の辞書にはない。全ての障害は自力で排除すればいい。
[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]
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