なぜ堂安律は“快適な場所”を離れたのか 日本代表MFが語っていた移籍へのホンネ「刺激がないと面白くはない」【現地発】

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日本代表でも主力として重宝される堂安。彼の成長は日本サッカーの結果にも結び付く(C)Getty Images

新天地でも順調に適応。しかし、当人は――

 フランクフルトへの移籍が正式に決まったのは、8月7日。シーズン終了から約2か月の時間が経った時だった。加入直後からスタメンとして起用され、試合を重ねるごとにチームメイトとの呼吸はあってきている。

 堂安の守備貢献は、すでにチームのオフェンス陣にあってトップレベルといっても過言ではない。的確なポジショニングから連続したプレス、長い距離をダッシュで戻り、1対1にも強い。相手カウンターになりそうな場面でも、堂安がその起点をつぶしてチームが助かる場面がたくさんある。こうした献身性はフライブルクでの経験がうまく生きていると言えよう。

「守備でのはめ方はフライブルクで学んだものが非常にある。なので、それは生かしていきたいと思います。そこに関しては(やることは)あまり変わりはないと思います」

 今季のブンデスリーガ第3節のレバークーゼン戦後に本人はそう話してくれた。攻撃面面でも好プレーが随所でみられ、開幕5戦で2ゴール、3アシストを記録。得点に関与した数はチームで2位の結果を残している。チャンピオンズリーグ(CL)の開幕節となったガラタサライ戦では、左サイドに流れてからのダイレクトパスでアシストするなど、5-1での快勝に貢献。フランクフルトの攻撃幅を確実に増やしている。

 新天地でも順調に適応しているのは確かだ。しかし、当人は現状に「いや、まだまだ」と表情を緩めない。

「フライブルクの3年目に比べたら、やっぱり3年かけて培ってきたものでプレーしてきたので、やりやすかったですし、『リツに預けよう』という感覚はありました。だけど、(フランクフルトにきて)まだ2か月でその感覚はもちろんまだないです」

 堂安にボールを預けるところから攻撃が始まるフライブルク時代と違い、フランクフルトでは新しい仲間の特徴と長所を探りながら、ボールを預けられる好ポジションでタイミングよくパスを要求する動作が求められる。

 フライブルクでの3年で築き上げたオートマティックさと、加入後2か月の新天地での感覚を比較すれば、それは容易ではない。

 だが、堂安が求めるところはその裏返しに潜んでいる。

「数字を重ねることで信頼は得られると思う。時間はかかりますけど、一日も早くそういう感覚になれるように、いいステップアップをしていきたいと思います」

 まだまだ成長段階ではある。CLの2戦目でフランクフルトは、スペインの雄アトレティコ・マドリーに1-5で完敗を喫した。だが、こうしたシビアな戦いが続く舞台こそ、「居心地の良い場所」を離れた堂安が求めていたチャレンジなのだ。

[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]

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