なぜベイスターズは相川亮二を新監督として迎えたのか? 首脳陣が「継承路線」に込めた新体制下での“狙い”【DeNA】

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早くも現場に立ち、秋季キャンプで若手たちの指導に汗を流す相川監督(C)萩原孝弘

捕手陣を立て直した指導力

 新監督に求めるものは、ずばり三浦野球の継承。

「相川監督の背番号についてですが、三浦監督の路線を継承しながらも自分の色を出していくということを念頭に、今の80番に1つアクセントを加えるという意味も加えて、81番を継承して付けていただくこととなりました」

 相川も託された番長の想いを背に、戦いに挑んでいく――。その体制づくりは、今秋に球団を去った人事のトップ・萩原龍大チーム統括本部長が掲げていた「監督が変わってもチームのビジョンは変わらない組織」が目標であるDeNAにとっても、最適な路線だった。

 横浜に帰ってきてからの相川は、ベンチワークは光っていた。バッテリーコーチから作戦チーフコーチを経て、ディフェンスチーフコーチと名称こそ変わったが、試合前には捕手陣を指導する姿は日常の風景だった。

 就任初年度の捕手陣は嶺井博希(現ソフトバンク)がFAで抜け、主に伊藤光と戸柱恭孝と若手の山本祐大で構成されていた。その当時に「選手は良い。ありがたいメンバー。バッテリーで問題があれば僕の責任です」と言い切っていた相川は、山本を侍ジャパンに抜擢されるまでに成長させ、「できれば、レギュラーキャッチャーを作りたい」との理想を実現させた。

 また、24年の終盤に山本が骨折で離脱の憂き目に遭っても、伊藤と戸柱の両ベテランが貫禄の働きで穴をカバー。さらにドラフト1位のトッププロスペクトである松尾汐恩もメキメキ頭角を表すなど、こと捕手においては球界屈指の陣容にまで整えた。その指導力も、今回の指揮官に推挙された重要なポイントとなっていると推測できる。

 秋季キャンプが始まり、指揮官としての活動も本格的にスタートした。だが、「今までと変わらないです」と積極的にコミュニケーションを取る相川の姿はコーチ時代と不変だ。

「逆にこういう立場によってそういうものがなくなっていく方が怖いので、スタッフの皆さんにもいつもで通りお願いしますと言いました」

 そう自然体を強調する指揮官が掲げる秋のテーマは、「チーム全体、選手、コーチ、チームスタッフ、どういう野球をやっていくのかっていうのを本当にみんなで理解して秋季トレーニングを終えられる、そこがゴールになるのかな」。ここでもチーム一丸の三浦野球の踏襲を思わせるコメントを残している。

 相川体制に求められているものは2つだ。兄貴分の果たせなかったリーグ優勝の達成。そしてDeNAの思い描く世界一の野球チームを具現化させること。決して達成が容易ではない目標となるが、新指揮官が内に秘める魂を解き放ち、勝利の女神を振り向かせるストーリーが、すでに始まっている。

[取材・文/萩原孝弘]

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