食事会場でも「見てる」 阪神の歴史的強さを支える捕手・坂本誠志郎が“最強投手陣”から愛される理由「坂本は配球の天才」
相手を探る坂本だが、味方を予習することも怠らない。(C)Getty Images
子どもたちの幼稚園の送り迎えも率先する3児のパパで愛妻家
坂本はチームが始動する春季キャンプのブルペンでボールを受けながら新加入の選手の情報を叩き込む。
ルーキーや助っ人に関しては、動画サイトを駆使して、持ち球や投球フォームをきっちり“予習”。今季5勝もしている1年目の伊原陵人に関しては、ドラフトで指名が決まるや否や、本人の映像はもちろんのこと、社会人時代に対戦経験があり、阪神の元同僚だった北條史也(現三菱重工West)に電話して、印象や特徴の聞き取りも行っていた。
さらにキャンプ中には、滞在するホテルのバイキング形式の食事会場で、若手投手が主食やおかずをどんなバランスで皿に載せているかにも、さりげなく目を配る。
「最初取ってきた量を食べきれずに残したり。同じものだけを取ってきたりとか。それがリードで生きるかは分からないですが、あの投手はああいう性格なんだなとか……イメージとして持っておくことは大事かなと。いろいろ見えてくるものがあるんです。野球以外の部分もいろいろ見てるんです」
何が生きたか生きなかったではない。バッテリーを組み、共同作業で1試合27個のアウトを奪いにいく投手をとにかく知ろうとすること。坂本の行動にはそんな意図が見え隠れする。
「捕手・坂本」への時間を割く一方で、「野手・坂本」の準備も怠らない。18時プレーボールとなるナイターの数時間前、日光が容赦なく照りつける甲子園球場のグラウンドに姿を見せた坂本はゆっくりとランニングを開始。パーカーのフードをすっぽり被ってたっぷりと汗を流す。そうして身体を温め、外野芝生でショートダッシュを数本こなし、休む間もなく室内練習場に移動してマシン相手にバットを振り込む。毎日変わらぬルーティンだ。
今季は課題だった打撃もここまで好調で、26試合連続出塁もマーク。キャンプから取り組んでいることが実を結びつつあるというが、核心を問うと、本人は「いつかは打てなくなると思うんで、また打てなくなった時に教えますね」とイタズラっぽく笑った。
グラウンドを離れれば、3児のパパで愛妻家。子どもたちの幼稚園の送り迎えも率先してやっている。自身4年ぶりとなる今季1号3ランを放った6月7日のオリックス戦後、甲子園から愛車を走らせて自宅に帰ると小学生の長女が、「パパ、プレゼント」とケーキが描かれた絵を手渡してくれたという。
「次の日が日曜日だったので娘も起きていてテレビでホームランを見てくれていました。本物のケーキじゃないんかい、と思いましたけどね(笑)」
ピッチャー、そして愛する家族――。“バッテリー”を組む人たちのために坂本は今日もミットを構え続ける。
[取材・文:遠藤礼]
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