「僕には審判と戦っているように見えた」――坂本誠志郎が仲間を問い正した甲子園のベンチ裏 独走Vを支えた女房役の存在感【阪神】
捕手として坂本がマスク越しに見つめていたのは、ピッチャーだけではない。野手たちも同様に一挙手一投足を見定めていた(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARAnext
主砲たちが「審判と戦っているように見えた」あの日
今年の坂本が存在感を見せたのは、攻守だけではない。今年は精神面でも「リーダー」として仲間をけん引した。
象徴的な出来事が交流戦期間中だった6月17日のロッテ戦(甲子園)。当時の阪神は、敵地で行われていた直近2カードで、西武、楽天に1つも勝てず6連敗。本拠地に戻って仕切り直したかったこの試合も投打がかみ合わず今季ワーストの連敗は「7」まで伸びていた。
この日、スタメンを外れ、ベンチスタートだった坂本の視線は投手だけでなく、野手陣に向いていた。「みんなフラストレーションが溜まっているように見えた」という中で、とりわけ目に留まったのは中軸を担う森下翔太と佐藤輝明の2人。背負うものの大きさゆえ、チーム状態が自身の精神面に直結するように苛立ち、審判の判定に不服そうな表情を浮かべているのが分かった。
「あの日、翔太と輝が審判のストライクゾーンの判定に対して態度に出していたんです。僕にはそれがピッチャーと戦ってない、審判と戦っているように見えました」
試合後、野手最年長の梅野隆太郎、そして代打の切り札である糸原健斗の先輩たちに「ちょっと僕から話をしていいですか」と了解をもらい、坂本はベンチ裏に野手陣を集めて話をした。
「(ベンチの)裏に来て(言いたいことを)言うのはいいと思う。でも、それが仲間に見えているところだったり、プレーをしている時にあからさまに出してっていうのは、俺は良いことないと思うから。そこじゃなくて、俺たちは結果で勝負せなあかんし、これだけ負けているのは誰も面白くない。ただ、俺たちはそれも含めて試合に勝って結果を出して評価される。連敗しているけど、何とか明日頑張って結果を出そう」
森下、佐藤輝はもちろん、ナインにも思いは伝わった。もう一度、優勝という目標へ心を1つにするきっかけになる時間だった。
渇望してきた出場機会を増やし、課題でもあった打撃面での進化。そして、自らの言葉でチームは勝利というシンプルかつ大事な目標を見つめ直した。その先に待っていたのが最速優勝という大きく、そして尊い勲章。単なる「女房役」や「正捕手」という言葉では収まらないチーム内での大きな存在として坂本誠志郎は頂点まで駆け上がったのだった。
[取材・文:遠藤礼]
【関連記事】阪神歴史的Vの裏に名捕手あり 坂本誠志郎が示した中日細川超えの「打撃の貢献」も話題、5位にランクイン「今年の強みだな」
【関連記事】食事会場でも「見てる」 阪神の歴史的強さを支える捕手・坂本誠志郎が“最強投手陣”から愛される理由「坂本は配球の天才」
【関連記事】「ポテンシャルはすごいものがある」阪神24歳ロマン砲の現役ドラフト移籍に球界OBの考察「細川に匹敵するぐらいの活躍はできる」






