期待の「打てるキャッチャー」になるための課題は? 名捕手が見たDeNA高卒2年目の逸材・松尾汐恩の「現在地」
悲願の優勝へ三浦監督の舵取りも注目となる(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
名伯楽も認める非凡な打撃センス
オールスターを目前にした7月15日だった。DeNAのプロスペクト捕手である松尾汐恩が一軍に戻ってきた。
「前日に電話が来て」と本人は少々驚くが、松尾はイースタンリーグの首位打者となる打率.327、さらに出塁率、OPSもリーグトップの好成績を記録。それだけに実績が評価されての必然の昇格とも言えた。
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高卒2年目の今年は春季キャンプから一軍に抜擢。オープン戦では打率.375、1ホームラン、OPS1.040とバッティングで猛アピールして開幕一軍の切符もゲット。しかし、いざ本番を迎えると、打率.182とバットも湿りがちになり、4月14日には二軍行きを告げられた。
ただ、2年目にして「一軍でレギュラー」という目標を掲げる20歳は、成績不振による降格にも「やることは変わらない」と素早くマインドセット。自主トレを共にし、「師匠」と慕う戸柱恭孝の「腐るなよ」の言葉もあり、「自分に負けずに頑張ろうっていう気になれました」と日々奮起。己がやってきたことを信じ、大きな変化を求めず、コツコツと研鑽を積んだ。
そうして再び掴んだ一軍の座。名だたる打者を育て上げた名伯楽・田代富雄打撃コーチは「スイングがまた一段と強くなってるね。しっかりとした振りになっている」と春先からの成長に頷いた。
また、「ボールを長く見られる。だから引きつけて、バットの芯が身体の近くを通って巻き付く感じで。なかなか教えても難しいことを、普通のバッターより上手くやるんだ」と自然とインサイドアウトの形が作れている点を評価する。
「変えることはない。やることはもう一緒でいい。やっぱり自分の良さっていうのを自覚しながらやっていかなきゃダメだよって、俺は本人に言ってるし。だから、多少のフォームの調整はあるけど、大きくは変えないしそのままやらせるよ」
松尾本人も名伯楽の意図を汲むように「変えた部分はないです」と冷静に語る、そして降格後に続いた二軍での快打を「そこまで色々考えることなく打席に立てていた。だからこその結果かもしれないですね。どうしようみたいな、そんなに深く考えることはなかった」と自己評価。より自然に、より感じるままにスイングしたことが功を奏した。
もっとも、ルーキーイヤーからバッティングセンスは非凡なものをみせていた。それは田代コーチだけでなく、各コーチも認めるところだ。
石井琢朗チーフ打撃コーチは「反応がいいですし、修正能力も高いです。また一発で仕留められる能力も持っています」と絶賛。「近い将来、クリーンアップを打てるキャッチャーとして獲ったと思うし、その素質を僕は持ってると思います」とキッパリ言い切る。