難敵撃破も神童に生じた「いらない間」 膠着状態の中で見えた“ボクサー・那須川天心”の次なる課題「倒しに行くと倒せない」

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ベルトを手にしてリング上では安堵の表情を浮かべた那須川。しかし、会見では「あまりベルトに興味はない」と語った。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

世界を知るトレーナーが語った「勝てる那須川天心」とは

 無論、陣営も本人の言う“課題”は承知の上だ。「判定だったからと言って評価できない試合ではなかった。高いレベルでボクシングができるっていうことは見せられたと思う」と総括した元世界2階級制覇王者の粟生隆寛トレーナーは、こうも話している。

「効かすまでいって倒しきれなかった。その課題っていうのはなんとなく見えてはいる。そこを詰めていって、4人のどのチャンピオンに挑戦しても勝てる那須川天心を作っていくだけだと思っています。

 今は距離感とか間の問題だと思いますね。実際にやっている本人も効いているっていうのは分かっていると思うので。そういう時には力んでしまう。そこのいらない間をなくして、流れのボクシングで倒しに行けるように修正していく感じですね」

 何はともあれ、世界戦への挑戦権は得た。現在、バンタム級でベルトを保持するのは4人。「ネクスト・モンスター」と評される中谷潤人(WBC=M.T)を筆頭に、堤聖也(WBA=角海老)、西田凌佑(IBF=六島)、武居由樹(WBO=大橋)といずれもボクシングスキルに優れた名手揃い。那須川にとっては小さくない壁となる。

 猛者たちに挑める那須川は「焦るつもりはない」と言いながら、「全員とやりたい」と強調。そして、「ベルトが欲しいからやるのではなく、強いからやる。昨日負けた拓真選手もベルトがあってもなくても強い。強いと言われる選手とやりたい。あまりベルトには興味がないですね」と続ける。

 強いからやる――。まるでバトル漫画やアニメの主人公の決め台詞。そして、また“炎上”しそうな言葉ではある。だが、プレッシャーを高めそうなコメントをあえて口にするところに、「ボクサー・那須川天心」の余裕が見て取れる。

 1年内の世界戦を目標に掲げた那須川。果たして、その間にどこまで己を高められるか。日本格闘技界の異端児に注目し続けたい。

[取材・文:羽澄凜太郎]

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