英記者が説いた那須川天心の「優位性」 なぜ“神童”は井上拓真戦を前に声価を高めているのか【現地発】

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前回のサンティリアン戦では、決死に打ち合い、がむしゃらに戦い抜いた那須川(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

ファンも、アンチも、心待ちにする“ジャッジメントデイ”

「1試合ごとに違った良さを見せられているのかな」という那須川が、拓真戦ではシャープなアウトボクシングをやり切るのか。どこかでタイミングのいいパンチを当て、ダウンを奪うなどの見せ場を作れるのか。キャリアをかけて臨んでくるのであろう拓真の強打を浴びた際、必要以上に熱くならずに対処し切れるのか。

 独特なキャラクターとスター性の高さゆえ、一部から井上尚弥(大橋)、中谷潤人(M.T.)に続く存在としての期待もかけられている那須川。今後、より大きな存在になっていくためにも、“世界王者”の看板は絶対必須であり、そのプロセスで内容も問われる。

 拓真との試合は中身、そして結果から多くのものが見えてくるに違いない。ファンも、アンチも、“ジャッジメントデイ”を目撃することを心待ちにしている。

 そして試合当日、観衆は真二つに分かれるのだろう。毀誉褒貶の激しい那須川には歓声と同じほどに大きなブーイングが注がれるのかもしれないが、27歳になった“神童”はそういった熱さにも感謝している。筆者が夏に行ったインタビュー中、「すでに日本で最もアンチの多いボクサーなのでは?」と問うと、「そうですね」と楽しそうに笑いながら、こんな印象的な言葉も残していた。

「(アンチの存在を)僕はありがたいと思っています。 どんな形であれ、何か言ってくれる人には熱があるわけですよ。その熱が大事ですよね。賛否両論あるっていうのが熱さを生み出すと思うんです。 ボクシングを見たことがないような人とかも、僕に何かを言ってくるわけじゃないですか。そういう形でボクシングを知ってもらうきっかけになればいいと思いますし、だからアンチのままで楽しんでもらいたいですよね」

 その熱がどの方向に向かっていくかは、自身のパフォーマンス次第。世界戦線への突入を「収穫祭の始まりです」とも称していた風雲児に、勝負の時がやってきた。スリリングな予感とともに、“審判の瞬間”まであとわずかである。

[取材・文:杉浦大介]

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