期待を裏切ったバウアー なぜ超大物助っ人は最後まで打ち込まれたのか? 首脳陣が証言した内情「全てが上手く行かないと塞ぎ込んでいた」【独占】
日本通運との試合で打ち込まれ、マウンド上で不満げな表情を見せたバウアー(C)産経新聞社
「野球を続けるかもわからない」と口にした“投げるサイエンティスト”
その背景にはバウアーの「精神状態」も絡む。入来コーチは「そういったメンタルではなかったと思います。なんか全てが上手く行かないというような感じで塞ぎ込んでいたような部分もありましたからね。その辺ももどかしかったです」と踏み込みづらい状況でもあったと回想する。
当の本人も「こんなにも難しいシーズンは、自分のキャリアの中でもなかった。メンタルに関しても、もっとうまく扱えていたのかもと思うこともあります」と告白したように、精神にも不調をきたしていた。それゆえに、改善点を探ることすらも難しい作業だったと想像できる。
ピッチャーの生命線でもあるフォーシーム。入来コーチは「これに関しては(山﨑)康晃もしかりなんですよ」と近年苦しんでいる元守護神との姿を重ね、「やっぱり日本のプロ野球のピッチャーの全体的な平均球速も上がっているんです」と、直近2年間で打者も速いストレートに慣れてきているポイントを挙げる。
「細かいところはいろいろできても、基本的なスタイルは変えられないじゃないですか。でもそのスタイルでは抑えられないので、バッターのレベルが上がってきている中で、何かを付け加えるのかどうするのか。結局バウアーはその着地点が見つからなかったですね」
暗いトンネルから抜け出す答えは、最後まで導き出せずに終わった。ポストシーズンに向けた社会人野球の強豪・日本通運との練習試合でも打ち込まれ、2025年に96番を見るのは奇しくもラストとなった。
もっとも、シーズン当初に中4日という短い間隔での登板で「彼は我々に貢献してくれた部分はありました」と明かす入来コーチ。本人の望んだペースでのマウンドが他の投手の負担軽減に繋がるケースもあったが、「ピッチングコーチとしては、あれはあれで逆に苦しかったんですよ」と素直な心境を漏らす。
「正直なところ、なかなか難しかったです。他のピッチャーとの兼ね合いもありますから。もう少し上手く他のピッチャーを回せていけたのではないかとか、リリーフのところでも上手く出来たのではないかとか、いろんなことが考えられるのでね」
バウアーの求めるローテーションは、あくまで勝利が担保された中で成立する。ただ結果が出なかったことで、他のピッチャーに負担を強いるだけのものになってしまった。
いずれにしても2025年シーズンにふたたびDeNAの一員となったMLB通算83勝をマークした超大物右腕が、2年前とは違った姿になっていたのは間違いない。「野球を続けるかもわからない」と口にした“投げるサイエンティスト”は、この先に何を見据えているだろうか。
[取材・文/萩原孝弘]
【関連記事】どん底に落ちたバウアーをどう立て直す? DeNA首脳陣に訊いた“プライド消えぬCY賞投手の再起計画”「結構難しいところはある」
【関連記事】監督の“理想像”だった三浦大輔が背負い続けた「責任」 DeNA側近たちが証言する舞台裏の葛藤「どうしたら勝てる環境になるのか」【独占】
【関連記事】叡智を持つコーチ陣も驚いた“謎の球速アップ” 2度の指名漏れも経験したドラ1がCS進出の救世主となった理由【DeNA】






