大砲・筒香嘉智が描く“番長への花道” TBS時代を知る恩師と紡ぐ物語「僕がアメリカにいた時、連絡いただいたのは監督でした」【DeNA】

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怪我人が相次いだ編成の中で孤軍奮闘した筒香。序盤の不振が嘘のように打ち始めた背景とは(C)萩原孝弘

“怖い筒香”の復活を予感させた8月の神宮

 27年ぶりのリーグ優勝を「最大の目標」として迎えた2025年のDeNA。その夢は現実のものとはならなかったが、9月に17勝6敗とラストスパートをかけ、なんとか2位の座をキープした。

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 キャプテンの牧秀悟と稀代のヒットメーカーである宮﨑敏郎を怪我で欠き、昨季に首位打者となったタイラー・オースティンも万全とは言えぬコンディションで常時出場は厳しい状況に陥った終盤戦。そんな危機的状態で打線を引っ張り、チームを引き上げたのは、筒香嘉智の存在だった。

 シーズン序盤はどうにも調子が上がらなかった。理想とは程遠いパフォーマンスに終始した筒香は7月上旬に打率が.174まで落ち込んで、ファームでの再調整を告げられた。

 しかし、約1か月後に再昇格を果たした33歳は、自慢の打棒が爆発。8月は33打数11安打、そのうち8本がホームランと長打率も1.161と飛躍的に向上。9月に入ってからはややバットが湿りがちになったが、中旬からは再び上昇気流に。10月1日に行われたヤクルトとのレギュラーシーズン最終戦では、日米通算250号のメモリアル弾をバックスクリーンに叩き込んだ。

 三浦大輔監督も節目の一発を最後に決めた千両役者ぶりを「本人も『打ちたい』と言ったところで、一打席目に決める。さすが筒香です」と称賛。「後半戦から夏に状態が上がってきて。(渡米する前とは)また違った怖さがありますよね」と続けた。

「今日もそうですけれども筒香が打席に入ると球場の雰囲気がガラッと変わりますから。そのファンの期待に応える打撃を見せてくれています」

 指揮官も感じ取った“怖い筒香”の復活。しかし、当の本人は「アメリカに行く前の感覚には戻そうとはしていない」と前置きしながら「以前の感覚にはまだ至ってないと思う」といまだ理想形とは言い難いと告白する。

 ただ、何もないわけではない。「僕の感覚の中では、昨年と今年の春先に比べればもちろん良くはなっています」と手応えもある。ターニングポイントは再昇格をしてから迎えた3戦目、代打で3ランを放った8月13日の神宮でのヤクルト戦の前にあると振り返る。

「そこから打席でのボールの見え方、ストレートの見え方、変化球の見え方、ストライトゾーンも僕の中では以前とは全然違いました。それまでは振りに行った中でボールだった、ストライクだったっていう感覚だったんですけど、そこからはしっかりストライク打てると思って打ちに行く球、ボールだと思って見逃せる球だという感覚が出てきました」

 以前から一貫して“自分の身体の中にある感覚”を重要視してきた。だからこそ、「見え方が変わった」と掴んだ独自の感覚に自信があった。

 状態が下がり気味となった9月もボールの見極めは出来ていた。局面に応じて四球をきっちり選び、渡米前からのストロングポイントである選球眼の復活も印象付けた。筒香は、「良くなりだしてからの感覚があったので、一度少し落ちたときでも耐えられました。だから一番悪い状況でも、あのラインで済んだのかなと思いますね」と最低限のラインを確認できたことで、それ以上は沈まない確証もあったという。

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