大坂なおみ2連覇なるか?!「全豪オープンテニス」の見どころを松岡修造が語る
そして、今回の全豪オープンでは、やはりこの精神面が大きなポイントになると松岡氏言う。
「これまでの強さは、彼女の感性がプレーにピタッとハマったときに出てきました。ですから、いかにポジティブな感性、いわゆる『なおみポジティブ感性』を1回戦からずっと作り上げていくことができるかどうかが大きなポイントになると思います」
一方で、コーチは代わったものの、彼女に助言することの重要さも松岡氏は指摘する。
「サービスとかストロークとか、個々のプレーが良くなってほしいということはありません。すでにとてもいいプレーをしているので、いかにそれを組み立てていくのか。勝ち抜いていくためのカギは、戦術ということになると思います。しかし、それをコーチに言われ、素直に実行することは大坂選手には合わないのではないかと考えています。そうなってしまうと、彼女の持ち味であるダイナミックさがなくなってしまうのです。何をしてくるのか分からない怖さというのが彼女の武器です。ですから、コーチは戦術を教えることが本当に難しく、重要になってくると思います」
ただ、今は勝たなくてはたなくてはいけないというプレッシャーから解き放たれ、チャレンジャーのような気持ちになっていると松岡氏は語る。
「僕は彼女の力は世界一だと思っています。自分は世界一のテニスができるという思いは、ぜひ彼女には常に持っていてほしいですね」。
昨シーズンのグランドスラムは、全豪は大坂なおみ、全仏はアシュリー・バーティ(オーストラリア)、ウィンブルドンはシモナ・ハレプ(ルーマニア)、そして全米はビアンカ・アンドレスク(カナダ)が制し、4大会とも優勝者が異なった。松岡氏は今の女子のテニス界を「誰にでも優勝のチャンスはある状態」と分析している。
現在の世界ランキングの第1位はバーティで、地元の応援はきっとすさまじいものがあるだろう。同時に彼女には、大きなプレッシャーがかかるのも確かだ。女子シングルのほうは、誰が優勝してもおかしくない展開が予想される。
一方、男子シングルスのほうだが、日本期待の錦織圭は、手術した肘の状態がまだ万全ではなく、今大会は欠場することになった。錦織は、2018年シーズンのウィンブルドン以降、昨年のウィンブルドンまで、グランドスラムでは5大会連続ベスト8以上進出を果たし調子が安定していただけに、欠場はなんとも寂しい。
そんな錦織に対する松岡氏の思いを聞いてみた。
「昨シーズンの錦織選手は、安定感があり、良く頑張ったと思います。ただ、彼は言葉にはしませんが、全仏後は肘や肩の調子はかなり悪かったように思います。自分のプレーがずっとできず、我慢してやってきてこのような結果を残したのですから、僕としてはまずはほめてあげたい。確かに、僕は彼に対しては厳しいコメントを出してきました。それは彼がグランドスラムで優勝できる力を持っているから、あえて厳しく言ったのです」
そして、今後の錦織に対しても松岡氏は「復帰したら、やはりグランドスラムやオリンピックで優勝するようなテニスをしてほしいです。それには、まずはミスを少なくするというのが第一条件です。大事なときにミスが多いように僕は見ています。安定的に勝っていくには、やはりミスを少なくすることが大切だと思います。しかも攻撃的なテニスをすることが必要です」とアドバイスする。
さらに、「ケガを治してフレッシュな体になれば、またいいテニスができる。あまり焦らずに、ケガをしっかりと治して万全の状態で戻ってきてほしい」とエールを送る。
錦織欠場の中での今大会では、やはりのナダル、ジョコビッチ、そしてフェデラーというTOP3のプレーに注目が集まる。
「この3人はみんな年々進化しています。そして、より攻撃的なテニスをするようになってきました。また、フェデラーなんかは、体力もどんどん増しているように思います」と、今大会もTOP3は健在であると松岡氏は語る。
一方で、アレクサンダー・ズベレフ、ステファノス・チチパス 、ドミニク・ティームら若手選手の台頭にも松岡氏は大いに期待していると言う。
「TOP3にはずっと活躍してほしいのですが、一方で、20代前半の選手の活躍を期待したいです。若手の選手がどこまで勝ち進んでいくか、とても楽しみにしています。この大会で優勝し、日本での知名度も上がるようなフレッシュな選手の誕生を待ち望んでいます」
そんな中で、松岡氏は1人の日本人選手に大いに注目していると言う。現在世界ランキング71位の西岡良仁だ。西岡は1月上旬に行われた新設の団体戦、ATPカップの日本代表になり大活躍を見せた。特にスペイン戦では、破れはしたものの、ナダルと互角に高かった姿は鮮烈だった。
松岡氏は「西岡選手は見ている者を魅了するテニスを持っています。背が高くはないのに世界に通用するテニスなのです。巧みなドロップショットやとんでもなく高いロブなど、実にいろいろなショットを繰り出す。ストロークの回転も常に変えている、1球1球に罠をしかけているようなプレーをする。とにかく、対戦相手がいやらしいと感じるようなテニスをするのです」と、西岡のプレーを絶賛している。そのゲームは、まるでチェスや将棋、テレビゲームを見ている感覚だと言う。
「彼のこのプレースタイルは全豪の観客にもきっと受けると思います。今回、どこまで勝ち進んでいくか分からないですよ」と、松岡氏は西岡の大ブレイクを大いに期待している。
他にも、昨年のウィンブルドンで本戦初出場した内山靖崇、ベテランの域に入った杉田祐一、伊藤竜馬といった日本人選手の活躍にも大いに注目していると松岡氏は言う。
WOWOWでは、車いすテニスの試合の中継も予定している。全豪では世界ランキング2位の国枝慎吾と同ランキング2位の上地結衣の活躍にも期待が集まる。
そんな車いすテニスの見どころと、両選手の魅力についても松岡氏に聞いてみた。
「車いすテニスは、勝ち負けとは違う魅力が見られるのです。勝ったから感動するのではなく、闘っている姿そのものが人の心をつかむのです。彼らの試合を見ていると、諦めないことを教わったりして、すごいパワーをもらいます。特に国枝選手は、最後まで諦めない闘志が本当にすごい。そして、自分はできるという信念がまたすごいのです。上地選手はバックハンドにトップスピンを入れたり、ネットプレーを積極的に取り入れたりするなど、常に新しいことをどんどん吸収して進化しています。その熱意は本当に素晴らしいです」と、車いすテニスにもぜひ注目してほしいと語る松岡氏。
最後に、テレビでより全豪オープンを楽しむ方法を聞いてみた。
「まずは全豪では、(現地の季節は夏なので)夏を感じてほしいですね。映像から伝わるのは、まずは暑さです。天候の暑さ、そして選手の心の熱さです。というのも、2020年は東京オリンピックがあるからです。代表になるには、この大会でランキングを1つでも上げる必要があります」
松岡氏自身もオリンピックイヤーになると、代表に入ることへ向かって意識が大きく変わったと言う。心の熱さが出てきたことを、自分でもよく分かったと語る。
「全豪の1勝によって、出られるかどうか決まるかもしれません。そんな心が熱い選手の姿にぜひ注目してください。自国開催の日本選手なら、その意識は特に強いと思います。全豪はオリンピックの予選会だと思っている選手は多いはずです」
2020年は東京オリンピックも控えている過酷なシーズン。今年の行方を占うトッププレーヤーたちの熱い戦いに世界中が注目する!
◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
「全豪オープンテニス」
【放送日】1月20日(月)~2月2日(日)連日生中継
WOWOWプライム、WOWOWライブ
※大会第1・2日無料放送
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]