敵地総立ちの大ブーイングに、ふっと笑み――「俺、いらないらしいよ」大谷翔平が楽しんだ“ヒリヒリする舞台”【ドジャース回顧録vol.14】
一塁で大谷とゲレーロJr.が笑顔を見せた(C)Getty Images
大歓声よりも、敵意に満ちたブーイングの方が忘れ難い夜がある。ドジャースの2025年シーズンを振り返るとき、ワールドシリーズ開幕戦の大谷翔平が見せた笑顔は、その象徴だ。重圧と野次を正面から受け止めながら、どこか楽しむように振る舞った姿は、ドジャースの主砲が“本物の勝負の舞台”を手に入れたことを強く印象づけた。
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現地時間10月24日、カナダ・トロント。ワールドシリーズという最高の舞台で、ドジャースは宿命とも言える地、ロジャース・センターに乗り込んだ。そこで待っていたのは、地鳴りのようなブーイングと、異例の合唱だった。
しかし、その敵意の渦中で、大谷翔平が見せたのは意外な「笑顔」だった。彼がかつて求めた“ヒリヒリ”する環境の答えが、そこにはあった。
2023年12月のFA狂騒曲。「オオタニがトロント行きのプライベートジェットに乗った」という誤報に踊らされたブルージェイズファンの傷跡は、1年以上が経過しても癒えてはいなかった。
ワールドシリーズ第1戦、4万4000人を超える観衆で埋まったスタンドから浴びせられたのは、強烈な野次とブーイング。特に9回、ドジャースの大敗が濃厚となった場面での第5打席には、スタジアム全体から「We don’t need you!(俺たちにお前はいらない!)」という大合唱が巻き起こった。
ディフェンディングチャンピオンの主砲として、そしてかつてトロントを「振った」男として、大谷はこれ以上ないほどの敵意にさらされた。
しかし、この異様な光景に誰よりも余裕を持って応じたのが、大谷本人だった。四球を選んで一塁へ歩くと、相手の主砲ブラディミール・ゲレーロJr.に対し、イタズラっぽく笑いながらこう語りかけたのだ。
「They don’t want me(俺のこと、いらないらしいよ)」





