格闘技界は明るい未来を築けるのか?新RIZIN王者と魔裟斗の発言で思い出されたビートたけしの言葉
何があろうと、次なるスターを育てること
そんな話から本題に入ると、鈴木千裕の口にした「不良やヤンキーが格闘技の質を下げている」や魔裟斗が言い放った10年後、20年後、(格闘技)人口が減っちゃうね」の裏側にあるものは何か。
簡単にいえば、それは「強さ」になると思う。
鈴木は、敵地に乗り込んでケラモフを倒し、RIZINフェザー級王者に成り上がった。
魔裟斗は、2002年にはじまった、K-1 WORLD MAXを文字通り命懸けで成立させ、計2回も世界王者に登り詰めた。
SNS上で、魔裟斗の発言に対し、「お前だって対戦相手を罵っていたじゃないか」といった見解を述べていた方がいたが、世界を争う人間同士が興行を盛り上げるために口にした罵り合いと、「ブレイキングダウン」に出る選手同士が罵り合うのは、まったく似て非なるもの。その違いを理解しようとしない人たちが格闘技を語ったところで、どこまで行っても噛み合うわけがない。
いや、元々「ブレイキングダウン」は格闘技ではない、という見方もあるので、最初から別ジャンルを比較対象することがおかしいという考え方も成り立つ。
とはいえ、全盛期の魔裟斗にしろ、山本“KID”徳郁にしろ、まったく不良の匂いがしなかったかといえば、決してそうではない。むしろそういったヤンチャしてきた匂いを感じさせたからこそ、幅広い層に伝わった部分は全否定できないし、そんな魔裟斗やKIDに憧れた人々は少なくないだろう。
しかしながら、単なる不良やヤンキーとは何が違うのか、といえば、やはりそこには、キックボクシング(K-1)やMMAという競技を極める「強さ」があったということ。そこに尽きる。
裏を返せば、まずは「ブレイキングダウン」の中で「ケンカ最強」を示した選手が、キックやMMAでそれなりの「強さ」を示すことができれば、その声は徐々に減っていくのではないかと思う。
ちなみに先に掲げた、土曜の夜8時にあった、『8時だョ! 全員集合』×『オレたちひょうきん族』はどうなったのかといえば、たけしさん曰く、「俺たちが上になったこともあったけど、結局はふたつともなくなっちゃった」だった。
要は、血で血を争うような抗争は、長くは続いていかない、ということなのか。だとすれば、もしかしたら現在の格闘技界は危機的状況の最中にあるのかもしれない。
それでも土曜夜8時の地上波バラエティ番組でいえば、2018年3月末まで『めちゃ×2イケてるッ!』にその系譜は受け継がれていたし、今もその影響を受けた人たちによって、お笑い界は支えられていると思う。
そう考えれば、仮の話、格闘技人気がかげりを見せたとしても、浮き沈みの激しい興行の世界ならば、ことさら一喜一憂せずに、次なるスターを育てる努力を怠らないこと。ファンを含めた関係者に必要なのは、その意識ではないか。
そこそこ長らく格闘技界の流れを身をもって体感してきた自分がいえるのはそのくらいではないかと思う。
[文:Show大谷泰顕]
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