“スーパー中学生”だった阪神・森木大智の今 育成契約からの再出発に何を思うのか「思い描いた通りにはいかなかった」
支配下登録が決まったルーキーの存在に“波紋”も
ファームの久保田智之投手コーチと昨秋から取り組んできたのは、投球動作の中で左足が着地した時に右肘より先をできるだけ身体の近くにすること。言い換えれば、頭の近くにボールを握った右手、いわゆる「トップの位置」が来ることで「無意識の中でも少しずつできるようになった」と振り返る。
近年、取り入れる投手も多いショートアーム型にも見えるが少し違う。森木は「僕の中ではショートアームというよりは左足が地面と着地したタイミングでちゃんと頭の近くにボールが上がってきていればいい。その過程がたまたま僕は小さくというか」とメカニックを明かした。
シンプルなフォームには積み重ねてきた時間と本人の苦悩、もどかしさ、幾多のトライアル&エラーがにじむ。1月の自主トレでは体幹強化や連動性を意識するため水泳や体操など他競技の動きもトレーニングに加えた。体操のように頭のイメージと実際の動きが一致するかといった空間認知能力が求められるわけだが、本人は「投げている時とかもちょっとしたズレに気づいて修正することも大事なので」と語る。
キャンプを終えた後も投球フォームは微修正している。ただ、「左足を着地した時にトップが頭の位置にあるのは僕のフォームの中で一番のポイントになるので」と“戻る場所”があるのは何よりも大きい。
課題を向き合う最中、チームは同じ育成契約ながら今春に1軍で150キロ超えの直球を連発して猛アピールに成功していたルーキーの工藤泰成を支配下登録。その存在は少なからず森木の心に波紋をもたらしていた。
「キャンプ中はすごく焦っていました。工藤さんがすごく良いピッチングしていて、自分も負けないようにと思って空回りして、取り組みがブレそうになった。それは良くないと思って、自分のやることをやろうと思って」
高知中に所属した当時、軟式の最速となる150キロを叩き出し、「スーパー中学生」と注目された男も21歳になった。回り道もしながらたどり着いた現在地から見据えるのは目標の支配下登録、そして1軍のマウンドだ。
「野球をやることに変わらないですし、やってやろうという気持ちです」
立場や背番号が変わっても、腕を振り続ける。そこに変わりはない。3年前、輝きを放ち、声援を浴びたあのマウンドに戻って見せる。森木大智の「新章」は始まったばかりだ。
[取材・文:遠藤礼]
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