汚された銀盤 渦中の「絶望」が照らし出したロシア・フィギュア界の暗部
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他を圧倒する実力から、「絶望」というニックネームを授けられた15歳の天才少女が、銀盤の上で絶望にうちひしがれていた。ドーピング疑惑の渦中にあり、疑念を晴らせぬまま北京五輪のフィギュアスケート女子に出場したカミラ・ワリエワ。ショートプログラムは首位発進したが、フリーではミスを連発して4位に沈んだ。
ヒール役としてだけ見る者もいれば、悲劇のヒロインと捉えた観衆も多くいた。それほどに演技後、泣きじゃくるワリエワの姿は痛々しく、業界を取り巻くあらゆる暗部へと光りを当てた。
まず世間をあきれさせたのは、疑惑が晴れぬまま暫定出場を認めたスポーツ仲裁裁判所の判断だった。出場を認めた理由に15歳という年齢を挙げて、世界ドーピング防止規定の「被保護者」と指摘。しかし、それが認められるのならば16歳未満の選手のドーピングを容認することになりかねない。開催国・中国とロシアの関係もあり、周囲は到底納得できない判断が国際機関から出された。
試合後の指導者の態度も周囲を驚かせた。エテリ・トゥトベリゼ・コーチは怒声を響かせワリエワを叱責した。これに言及したのが、東京五輪から世界中のひんしゅくを買い続けている国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長。「ぼったくり男爵」は「ぞっとした。こんなにも選手に冷たい態度で突き放すとは」とトゥトベリゼ・コーチを批難。五輪出場選手の年齢制限を引き上げる可能性に言及した。