【エディージャパン検証】なぜFB李承信の”妙策”は機能したのか 決勝フィジー戦で注目したいポイントは?

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 ディラン・ライリーが最初に奪ったトライは、ライン参加してきた李のゴロパントから生まれた。サモアの守りは速くて堅いが、防御ラインの選手が素早く前に出てくる分、防御ラインの裏には広いスペースがあることを事前の分析でつかんでいたのだろう。SOで培った、防御の隙間を見抜く目で、絶妙な位置に走り込んだ上で転がしたキックは見事にトライにつながった。また長田智希が奪った3本目のトライも、李のキックパスによるものだった。相手タックルに体勢を崩されはしたが、キックを蹴ることができたのは、SOよりも相手から遠いFBに位置していたことで、ほんの0コンマ数秒程度の「間」が生じたからこそだ。

 合計7トライを挙げた攻撃は見事。新布陣が奏功したことに加え、相手のミスにつけ込んでの逆襲もこの日は数多く見られた。ジャパンが格上の相手と対戦した時の「いいところまでは攻め込むが、最後の最後でミスをして、得点できないばかりか、逆襲を喰らってトライを奪われる」という、選手も観客も感じるイラつきを、この試合ではサモア、およびサモアの応援団に味あわすことができていた。

 一方で前2戦で度々見られたハンドリングエラーがこの試合でも散見された。幸いなことに、サモアの方にジャパンを上回るハンドリングエラーが見られたために得点に結びつくことはほぼなかったものの、依然として課題であり続けている。

 ラインアウトも安定していなかった。こちらも幸いなことに敵ボールになる場面は少なかったが、意図したポイントとは別の場所のプレーヤーがなんとか確保したという場面が3度ほどあったと記憶している。

 不用意なキックからのカウンターアタックを止めきれずに失ったトライもあった。1対1の場面を作られると、まだまだ力負けすることが多いので、キックの飛距離のコントロールの精度向上と、確実にダブルタックルの餌食にできるようなキックチェイス方法を検討すべきだろう。

 決勝の相手となるフィジーは、奔放なランに加え、強力なセットプレーを武器に攻撃的なラグビーを展開してくる、世界ランキング12位の強豪国だ。多くの選手が幼少時からラグビーに親しんでいるため、ハンドリングが実に巧みで、地面に落ちているボールをひょいと持ち上げてしまう器用さをほぼ全ての選手が持ち合わせている。それゆえ、ハンドリングミスは即トライに結びつく危険性を秘めている。ジャパンがどこまで隙のないラグビーをすることができるのか。誰がどこのポジションで出場するのかと併せ、大いに楽しみだ。





[文:江良与一]

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