田中将大、前田健太、坂本勇人…「黄金世代」ドラ1右腕の引退後の奮闘

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「高卒で一緒に入団した選手たちは特に思い入れがある」

子供達を集めて打撃指導する増渕


 元ヤクルト・増渕竜義が埼玉県上尾市内で塾長を務める野球スクール「上尾ベースボールアカデミー」の盛況ぶりが凄い。昨年4月に開校した当初の会員は数人だけだったが、現在は小・中学生合わせて100人を超えた。口コミで人気を呼び、埼玉県内だけでなく東京、茨城から通う子供もいる。「個人練習が中心なので、試合で結果が出ると聞くとうれしいですね。教えている子供の中からプロ野球選手が出ればうれしいけど、野球を通して人間的に大きくなってほしいという思いが強いです」と語った。

 田中将大、前田健太、坂本勇人と88年度生まれの「黄金世代」が指名された06年ドラフト。公立高の鷲宮で剛腕投手として名を轟かせていた増渕も西武、ヤクルトから1位指名を受け、抽選でヤクルトに入団した。将来を嘱望されたが、苦しんだ時期が長かった。チームが優勝争いを繰り広げた11年は自身最多の7勝を挙げたが、翌12年からわずか2勝のみ。「リリースする瞬間にイメージする感覚で投げられなくなり、どんどん悪くなっていった。肘から指先までの感覚がない感じですかね。ケガ…うーん違いますね。技術がなかったんです」。150キロを超える球速は140キロまで落ちた。14年途中に日本ハムに移籍したが1軍登板なし。15年オフに戦力外通告を受けると、「やり切ったと思うし怖さもあった。自分の感覚で投げられないままだと(獲得してくれた)球団に迷惑が掛かる」と9年間の現役生活に終止符を打った。

 引退後はアルバイトで運送業や飲食店の接客、厨房で働いた。器用な手さばきと親しみやすい人柄で「自分で店を出さない?」と誘われることもあった。増渕も当初は野球と違う仕事でセカンドキャリアを歩もうと思っていた。だが、知人から誘われた野球教室で子供たちに教えると、「やっぱり野球が好きなんですよね。ずっと野球しかやってこなかったんで」と人生を見つめ直した。野球教室の塾長の話を持ち掛けられると決断に迷いはなかった。

 室内練習場は広さ約800平方メートルの倉庫を改造した。「子供の膝に負担がかからないように。できるだけ良い環境で野球をしてもらいたい。神宮や西武ドームの芝に近いです」と業者から質の高い人工芝を発注。ブルペンも作り、マウンドの土も自ら選んだ。トレーニングメニューはヤクルトなど3球団でトレーナー、コンディショニングコーチとして活動した高橋純一氏に作成を依頼した。2か月の準備期間を経て開校。指導にも理念がある。「注意はしますが、怒りません。怒られる怖さで教えられたことが抜けていく。小学生の低学年はまず楽しんでもらうこと。性格も1人1人違う。掛ける言葉にも気をつけています」。野球スクールは子供たちの笑顔があふれる。口コミで人気を呼ぶ理由が垣間見えた。

人間教育に力を入れ、室内練習場には自身が作った張り紙も

 引退した際、親交の深い前田健から名刺入れをプレゼントされた。「高卒で一緒に入団した選手たちは特に思い入れがあります。マー君(田中)、マエケン(前田健)、(坂本)勇人、吉川光夫、大嶺、梶谷、木村文紀…。マー君は特に感じますが、強い信念を持って自分を見失わない選手が活躍している。僕はもっと長く野球をやりたかったけどできなかった。厳しい世界でやっているみんなには本当に頑張ってほしい」。野球を愛する気持ち、戦友との絆は変わらない。

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※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません

[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]

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