アジア制覇の主将・藤田譲瑠チマが迎える「パリ五輪」だけじゃない正念場の1年 「生きる道」を確立できるか

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チームをコントロールするパスワークは見事だが、欧州で評価を高めるにはさらなるアピールが必要だ(C)Getty Images

 先月行われたU-23アジアカップで優勝を果たし、パリ五輪の出場を決めたU-23日本代表。本大会に向けてはオーバーエイジやU-23欧州組を加え、招集リストそのものが変わるため、殊勲のチームは一度リセットされる運命にある。

 とはいえ、予選で活躍した選手が最初の候補であるのは間違いない。特に大会MVPに選ばれたキャプテンの藤田譲瑠チマは、五輪本大会でもメンバー入りが期待される筆頭候補の一人だろう。

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 藤田の魅力は複数あるが、まずは正確な技術だ。彼のインサイドキックのパスが、味方の勢いを殺す方向、つまり逆足に出てしまう場面を見ることは少ない。軌道も氷の上を滑るかのように美しいグラウンダーで味方の足下へ届く。ワンタッチも正確だ。U-23アジアカップ準決勝のイラク戦、前半42分に荒木遼太郎が決めた日本の2点目は、大畑歩夢からのスピードパスを、荒木の3人目の動きを見定めた藤田から、完璧なワンタッチパスが入った。こうしたシンプルな技術で藤田の上を行く選手は、なかなかいない。

 また、藤田はキックの予備動作が小さく、蹴り足の落下エネルギーを使ってコンパクトに蹴るので、タイミングを逃さないのも大きな特徴だ。

 その恩恵を最も受けたのが、細谷真大だろう。U-23アジアカップ準決勝のイラク戦の前半28分の場面では、細谷のプルアウェイを見定めた藤田の絶妙な浮き球パスが、ストライカーの奮起をアシストした。通常、使ってもらえないことも多い細谷の動き出しだが、藤田はタイミングを縮めたとっさの判断でも、イチ、ニ、ポン!で正確にパスを出せる選手であり、細谷とは理想の関係性が見えた。

 このアシスト場面に限らず、藤田はFWがサッと顔を出した箇所へ、瞬間的な反応で縦パスを通すことができる。他にも動き出しに特徴のある選手、たとえば上田綺世や伊東純也らとも面白い連係ができるのではないか。

 こうしたプレーテンポの早さ、豊富なタイミングとも深い関わりがあるが、藤田のもう一つの魅力はアジリティ(敏捷性)だ。高重心で軸の移動がスムーズであり、バランスの回復が異常なほど早い。

 これはパスだけでなく、ボール奪取にも生きている。相手の懐へ潜り込み、ボールを奪い切る能力が高いのは、藤田の大きな持ち味だ。上背が無くても、スピードが普通でも、方向転換と加減速をベースとしたアジリティの高さが、藤田を攻守にバランスの良いMFとして成立させている。

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