「集中力が芯から高い」OAなしで”史上初”を成し遂げた大岩ジャパンの戦いぶりが心を揺さぶるワケ【パリ五輪】
マリ戦での山本の決勝点は高い集中力や足を止めない献身性の賜物。GK小久保の存在感も絶大だった(C)Getty Images
まさかの(失礼!)2連勝により、パリ五輪・サッカー男子日本代表は、決勝トーナメント進出を果たした。オーバーエイジを招集しなかったチームとしては、史上初だ。
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マリに1-0で勝利したのは、まさに劇的な展開だった。82分に細谷真大のサイド突破から山本理仁が先制ゴールを挙げ、歓喜に沸く日本。しかし一転、数分後のアディショナルタイムにPKを献上してしまい、緊張が走ったが、小久保玲央ブライアンの覇気に押されたのか、マリはPKを失敗。焦燥は一転、大歓喜への巻き戻しが起こり、1-0でフィニッシュした。
終盤はジェットコースターのような絶叫系の展開だったが、とはいえ、日本は常に主体性のあるプレーで、試合を操作していた。
パラグアイ戦で見事なハイプレス回避を見せた影響か、あるいはコンディションの不安が大きかったためか、マリは勝利必須の割には慎重に、前半は自陣に構える守備を選択した。日本のサイド攻撃に崩される場面が増えると、マリは両ウイングが大畑歩夢と関根大輝にマンツーマンで付くようになり、サイドからの前進を徹底して阻むようになる。中央もボランチを2枚並べる形に変え、日本の4-3-3のビルドアップに対してミスマッチが起きないよう、各所をマンツーマンで噛み合わせた。
前半の中頃から、このマッチアップに手を焼いた日本は攻撃の勢いが止まった。1対1で剥がし切れず、細谷もボールを収められない。逆にボールを奪われてサイドからカウンターを食らう場面が目につき、特に日本の左サイド、斉藤光毅と大畑歩夢の箇所は終始、ワンツー突破に晒された。”普通の”日本代表なら、いかにも先制点を許しそうな流れではある。
しかし、大岩ジャパンは粘り強かった。中盤を突破されてもプレスバックが早く、自陣でカバーして跳ね返す。マリに攻略されている印象はなく、危険だったのは、ほぼセットプレーだ。終盤にフリーキックからゴールポストを叩いた場面など、セットプレーには危機を感じたが、それ以外の日本は危なげなく戦えていた。
ビルドアップからの攻撃についても、いつまでも1対1で噛み合わせて殺されっぱなしではない。関根が対面するウイングを引き連れてスペースを空けたり、山本がCB間へ飛び出したりと(終盤にこの動きが実を結ぶわけだが)、徐々にマンツーマンの守備ブロックに対する打開策を見出した。人に強いマリではあるが、中盤で相手がフリーになると、焦って捕まえようと前に出て、背後を空ける傾向がある。細谷、荒木、山本はその隙を狙い、あと一歩で届く場面が何度もあった。
日本は賢く戦っていた。攻守共に、ここまではリスクチャレンジし、ここからは撤退して粘り強く。その線引きというか勝負感というか、アジア最終予選の優勝は伊達じゃないというか、頼もしかった。前半は日本が概ねボールを握りつつ、0-0で終了。
後半、互いにゆずらない一進一退の中、先に動いてきたのはマリだった。マリは初戦で勝ち点1しか取れておらず、2戦目は勝つしかない。プレッシングの位置が高くなり、守備に弱みが見えた日本の左サイドに11番のエース格、T・ディアラを移して攻め手を集めるなど、明らかにギアが上がった。
すると日本は57分、斉藤と荒木に代え、藤尾翔太と三戸舜介を投入。マリとは違い、日本は最悪、引き分けでも構わない。手早く守備強化の采配が行われ、マリの勢いを止めた。