【ラグビー・リーグワン】「予定調和」を許さなかったジョネ・ナイカブラ BL東京を象徴する”苦労人”が見せた決勝での存在感
そして、埼玉WKに致命傷を与えたのが、WTBジョネ・ナイカブラだ。前半27分にライン際を激走したナイカブラは3人の選手を弾き飛ばしてトライを挙げる。さらに前半終了間際にもライン際を独走。トイメンの豪州代表マリカ・コロインベテが必死に追いすがって何とかトライは防いだが、この際のタックルが危険なものだったとして10分間のシンビンを宣告された。そして後半5分、ラインアウトのこぼれ球を拾ったナイカブラは、コロインベテ不在の右ライン際を鋭くついて2本目のトライを奪ったのだ。まさに自分自身でお膳立てしたようなトライだった。
フィジー出身で、ニュージーランドのケルストンボーイズ高から摂南大に入学するため来日。決して強豪校ではない摂南大にあって、ナイカブラは7人制日本代表に選ばれるなど、それなりの選手ではあったが、決して突出した存在ではなかった。2018年に入部したBL東京も当時は低迷期の真っ只中。それでも腐らずに修練を重ねた結果、2023年のW杯でジャパン入りし、直前のテストマッチでトライを量産し、本戦でもアルゼンチン戦で追撃のトライを挙げるなど活躍した。ラグビー選手としては「高齢」な30歳を目前にしてようやく花開いた苦労人なのだ。ナイカブラの成長と軌を一にしてBL東京も復調。下位に低迷していた順位を、徐々に上げ、リーグワン発足後は3シーズンで2度プレーオフに進出した。
この試合では先に紹介した2トライ以外にも、終了間際には堀江のパスをスローフォワードにしてしまうビッグタックルを見せ、終了のフォーンが鳴った後の最後の最後のブレイクダウンではジャッカルを決めて、文字通り埼玉WKにトドメを刺した。「引退の花道」という予定調和を許さないこの活躍で、ナイカブラはプレイヤー・オブ・ザ・マッチを手にした。
6月からに行われる世界ランキング上位国とのテストマッチの出場選手に選ばれる可能性の高いナイカブラ。次は、世界ランキング上位国相手に「空気を読まない」プレーでジャイアントキリングの主役を演じてほしいものだ。
[文:江良与一]
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