ジャパンⅩⅤがマオリ・オールブラックス戦で露呈した決定力不足 課題解消は2027年に間に合うのか?【ラグビー】

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 しかし、この試合、こうした不安を吹き飛ばすほどに、ジャパンⅩⅤの入りは良かった。先制トライは相手とのコンタクト後、ラックが成立する前にHO原田が素早くボールを拾い上げてインゴールに雪崩れ込んで挙げたが、これは「超速ラグビー」の一つの理想型だったと言えよう。その他にも2回連続でスクラムで反則を誘ったことなど、さまざまな場面全てで厳しいプレッシャーをかけ、MABのプレーヤーたちを散々に慌てさせた。

 そんな中でも一瞬の隙をついてゴール前まで迫り、すぐさま同点のトライを奪い返したMABは流石だとしか言いようがないが、しばらくはジャパンⅩⅤの攻勢が続く。素早い仕掛けに、度重なる反則を犯したMABは自陣に釘付けにされながらシンビンによる退場者で1名少ないという状況に追い込まれたのだ。

 ここで、一気に畳み掛けてリードを広げたかったジャパンⅩⅤだったが、MABは追加点を許さなかった。これは王国の底力の現れでもあり、またジャパンⅩⅤのチームとしての成熟度の低さの現れでもあった。この後は筆者が戦前に予想した通りの、ミスを突かれて逆襲を喰らい、一気にトライまで持って行かれて点数差だけが開いていく、という負け試合パターンに見事にハマってしまい、試合終盤までこの状態が続いた。最後の最後でスクラムで押し勝って得たチャンスから根塚が1トライを返したものの、時すでに遅し。観衆も選手もフラストレーションが溜まった一戦だったろう。

 収穫はスクラムで優位に立ったこと。4回も反則を誘ったことは大いに誇ってよいと思う。今後もスクラムは大きな武器になることだろう。

 イングランド戦に比べ、敵陣で戦う時間が長くなったことも収穫の一つだ。能動的な仕掛けで敵陣深くまで攻め込むことまではできるようになったのだから、後はスペシャルなムーヴメントを用意するか、絶対的なフィニッシャーを育成するかということになろう。この試合フル出場して度々快走を見せた矢崎にはフィニッシャーとしてもムーブメントの中心的な存在としても成長していくことを期待したい。

 一方で残念だったのがラインアウトからの攻撃。スチールを3度くらったのも大いに反省すべきだが、それ以上にラインアウトからのモールプッシュにこだわりすぎた印象があった。しかも、押し切ってトライを取るどころか2度も相手にボールを奪われるという失態も犯した。スローのミスは減ったという印象があり、ある程度安定してボールを確保できる目処は立ったのだから、モールプッシュ以外のオプションもぜひ開発していただきたい。2027年W杯に向けての大きな課題の一つだ。

 この2戦でまだまだチームとしての成熟度が足りていないことが明らかになり、課題も山ほど見つかった。2027年までの3年は長いようで短い。この2試合の敗戦の教訓をどう活かして3年後に繋げていくのか。エディーHCの手腕に注目したい。





[文:江良与一]

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