戦慄KO負けの佐々木尽に突き付けられた「現実」 “世界の壁”を示した最強王者ノーマンの言葉「満足している場合ではない」

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記憶にも残るノックアウトを生んだ挑戦者の姿勢

 入場時は本場顔負けの派手なリングインでスター性を感じさせ、ゴング後も勝利を信じて戦い続けた佐々木。ボディージャブを多用し、普段よりも右を使おうとする工夫も見て取れた。近年のアメリカの多くのボクサーがそうであるようにダメージを受けた後は逃げ回るのではなく、最後の最後まで後には引かなかった。

 敗戦が不可避であっても決意を持って全力を尽くすことの形容として、英語には“Go down swinging”という表現がある。全力パンチを振り回しながらリングに沈んだ佐々木の負け方はまさにそれであり、観客を戦慄させ、同時に記憶にも残るノックアウトが生まれたのは挑戦者のそんな姿勢ゆえだった。

 そもそも挑戦機会を得ることすら容易ではない階級である。可能な時に世界戦を組んだことも、自身の戦い方を貫いて敗れたことも、ここで恥じる必要はまったくない。

 ただ……、今後に再起し、あくまで「世界」を目標とするなら、極めて大きな差を突きつけられたのは紛れもない現実だった。今のノーマンはもうハイレベルの王者の域に達したように見えるが、それに近い位置にいるコンテンダーの層もウェルター級は厚い。

 実はノーマンにしても、ほんの1年強前までそれほど目立つ存在ではなかった。両拳の故障もあって2023年11月まで無名選手相手に3連続判定勝ちに終わり、トップランクからもそれほど熱心なプッシュを受けていたわけではない。それが昨年5月以降、世界戦で3連続KO勝ち。試合内容も素晴らしく、世界戦々突入とともに自信をつけることで覚醒した印象がある。

「世界王者になったら、もうそれでやり遂げたと考えてしまいがちだ。(ただ、)王者になるのは簡単ではないが、防衛するのはもっと難しい。ジン・ササキが実際にアメリカに来て、挑戦状を叩きつけたように、王者になると追ってくる選手が増える。これから他にもそういう選手が出てくるだろう。昨日やり遂げたことに満足している場合ではない。大事なのは今日。仕事が終わることなく、前に進み続ける」

 ノーマンのそんな言葉は、ウェルター級には王者ですら警戒するコンテンダーがたくさんいることを指し示す。佐々木が戦っているのはそんな階級なのである。WBA、IBF王者のジャロン・“ブーツ”・エニス(米国)がスーパーウェルター級への昇級を表明し、近いうちに複数王座が空位になることはタイトル狙いの選手にとっては好材料だが、佐々木がその戦線に食い込むことも、勝ち切ることも、並大抵の難しさではないはずだ。

 まずは、群雄割拠の強力階級で戦う意味と、素晴らしい王者をより身近で見る機会を与えてくれた勇敢なチャレンジャーに感謝したい。そして、記憶が抜け落ちているという今はゆっくりと身体を休め、ダメージを抜いてほしい。その上で、また前に進んでほしい。ジム、関係者ともゆっくりと話し、目標と課題を改めて見定め、再び真っ直ぐに邁進していってほしいと願わずにはいられない。

[取材・文:杉浦大介]

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