”悪魔の6秒”はなぜ起きたのか 柔道の「不可解判定問題」 過去の事例から学ぶこととは【パリ五輪】
五輪柔道で「世紀の誤審」として今も語り継がれているのは、シドニー五輪100キロ級の決定戦だろう。日本代表の篠原信一の対戦相手は96年アトランタ五輪王者のダビド・ドゥイエ(フランス)。
問題のシーンは1分半が過ぎたあたりで起こった。篠原はドゥイエの内股に反応。右脚を高く突き上げて、見事な内股すかしで切り返し、ドゥイエは背中から、篠原は横から落ちる形となった。
篠原自身も1本勝ちを確信、渾身のガッツポーズまで出したが、判定はドゥイエのポイントとなった。
最も近くにいた副審は篠原の1本勝ちを宣告したが、主審ともうひとりの副審はドゥイエのポイントを主張して譲らず。ポイントが覆らないまま、試合は終了、篠原は銀メダルに終わった。
表彰台で男泣きを見せた篠原に同情論も高まり、試合後、日本は山下泰裕監督と斉藤仁コーチが猛抗議したが、認められず。後に全日本柔道連盟が抗議文を送り、国際柔道連盟(IJF)はドゥイエ有効の判定を誤審と認めた。
結局、判定が覆ることはなかったが、これがビデオ判定導入のきっかけになったとされる。
今回の事例では「審判の技術力」「判定ミスが起きたときの対処法」などもクローズアップされている。日本選手団は試合後に国際柔道連盟に文書で抗議するも、「待て」後に締め技が続いたことへの明確な説明はなかったとされる。
不可解判定で涙を飲むのは4年間、必死の思いで練習してきた選手たちとなる。
現行のレギュレーションでは、仮に誤審や不可解な判定があっても、その場で判定を覆すような方法がないことも課題となるか。シドニー五輪がビデオ判定導入の契機となったように、今回の事例がさらにクリアな判定を生むための一助となることを願いたい。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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