“ダーティ批判”は「馬鹿げている」 米記者たちが見た中谷潤人の成長 至高の井上尚弥戦に向けて階級を上げるべきか?【現地発】
井上戦に向けて中谷が挑むべき道はいかなるものなのか。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
強烈な左フックを持つカルデナスと拳を交えれば……
至高の一戦に向け、注目はまず両雄がそれまでにどんな相手と対戦し、そこでどういった戦いをしていくか。井上は9月にWBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフとの対戦が内定し、12月にもサウジアラビアで登場という流れになっている。一方、中谷はどの階級で、そして誰と戦うべきなのか。
ドノバン記者は中谷のバンタム級統一路線続行に色気を見せつつ、井上戦を睨むのであれば、早く階級を上げるべきという見解だった。
「個人的にはジュントがバンタム級でさらなる統一戦を成し遂げる姿を見たいところだが、それよりも1階級上でノンタイトル戦を経験することで井上戦に備えられる。ジュントはスーパーフライ級での初戦でフランシスコ・“チワス”・ロドリゲスJr.に勝利した際、爆発的な強さは見せなかったが、それでも階級に慣れるのに絶好の機会になった。その一戦を経て、以降は毎回素晴らしいパフォーマンスを見せている。スーパーバンタム級でもそんな試合を挟めれば、井上戦での勝機は高まるだろう」
2022年11月、新階級での試金石になったロドリゲス戦で中谷は時に被弾しながらも大差の判定勝ちを収めた。新しい階級初戦で快勝したとはいえなかったものの、経験豊富な相手に幅の広さを示し、その後のさらなる快進撃に繋げたのだった。
2024年2月のバンタム級昇級時には、中谷はテストマッチなしでもWBC同級王者アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)に6回KOで圧勝している。ただ、スーパーバンタム級での標的は、とにかく破格の強者(井上尚弥)となるだけに、その前に新階級でのテストマッチを挟んでおくべきという意見には一理ある。
今年2月のデビッド・クエジャル(メキシコ)戦、最新の西田戦での中谷は、少々強引な攻めも目立った。パンチを浴びる場面も少なからずあり、クエジャル戦では危ないタイミングで左フックも受けた。それでもあっさりとねじ伏せる力強さは見事ではあったものの、「もっとパワーのある選手と対戦したらどうなるか」という懸念を感じさせたのも事実だった。
無論、過去2戦では相手のタイプも見越してそういう戦い方を選択したのだろうし、井上戦で同じようなストロングスタイルで臨むとは限らない。たとえそうだとして、ビッグファイトの前に新階級で強豪との正当なチューンナップをこなしておくことにはプラスの要素しかない。
例えば、ラモン・カルデナス(米国)、ルイス・ネリ(メキシコ)のようにスーパーバンタム級での実績と一定以上のパワーを持ち、井上の過去の対戦者でもある選手と戦えば面白い。特に強烈な左フックを持つカルデナスと拳を交えれば、中谷のディフェンス、タフネスなどが試され、“モンスター”挑戦への強烈アピールになるに違いない。
そういった意味で、中谷の次戦のマッチメイクは実に興味深い。壮大なストーリーの重要なチェックポイントになる一戦でどんな戦いを見せるか。そこでは理に叶い、多少のリスクもあるコンテンダーを鮮烈に倒し、日本ボクシング史上最大級の一戦に向けて気勢を上げてもらいたいところだ。
[取材・文:杉浦大介]
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