「謙虚すぎる」と叱咤されたところから始まった変化 佐野海舟がドイツで描く日本代表への成長曲線【現地発】
マインツで確固たる地位を築きつつある佐野だが、現状に満足はしていない。(C)Getty Images
シュツットガルトの「伝説」となった遠藤のように
相手選手が引き留めようとする手を弾き飛ばし、相手選手の間に割って入って突進する力もつけている佐野。さらにサイドから相手をうまくブロックしながら持ち運んで好クロスをあげるシーンも増えてきている。
ただそこでも満足はせず。常にプラスアルファを求めている。
「あの局面での質だったり、自分でいききることも必要かなと思います。シュートを見せないとやっぱり(相手を)引き寄せることできないと思う。もうちょっと強気になる部分かな」
その課題解決の大きなカギとなるのが、中盤センターでコンビを組んでいるアミリの存在だろう。
昨季にレバークーゼンから移籍してきた28歳は、すぐさま中心選手としてチームを掌握。チームのブンデスリーガ残留に大貢献。今季は充実の時を経て、3月には待望のドイツ代表への復帰。さらにイタリア代表とのUEFAネーションズリーグ決勝トーナメント1回戦ファーストレグでいきなりスタメン起用と、これ以上ない上昇気流に乗っている選手だ。
そんなアミリは、巧みなゲームメイクだけではなく、卓越したシュートで得点も決める点も魅力。その強みを佐野はつぶさに観察していることを明かしてくれた。
「本当にすごいし、勝負強さを出せるのが上に行ける選手、上でやっていく選手だと思う。いい見本が隣にいるのでしっかり見習いながら。でもナディムがいいプレーできるようにというのも考えて、自分のところでバランスがとれるようにできるといいなと」
先述のドルトムント戦では、こぼれ球を拾った流れから躊躇せずに鋭いシュートを放つシーンがあった。枠は惜しくも外したが、タイミング的にはまさにアミリのそれ。ボランチとしてゲームを支配し、チームに安定感を与えるのが必要不可欠なタスクであるが、世界のトッププレーヤーは大事なところで発揮すると得点力やチャンスメイク力も併せ持つ。そんな意欲を体現しているように見えた。
「チームの勝利が一番なので。そこはぶらすことなく。でも(ゴールやアシストへのこだわりは)変わらずあります。狙っていかないとなと思います」
シュツットガルト時代の遠藤航(現リバプール)が伝説となったのは、抜群のデュエル力だけではなく、自力残留をかけた大事なリーグ最終節、しかもアディショナルタイムに、劇的な決勝点を決めたからでもあった。あのころの遠藤は、さらに上のステージへ行くために、ボールの運び方、チャンスへの関わり方、ゴールへのこだわりを口にしていたのを思い出す。
現時点で佐野はヘンリクセン監督に「リーグ最高のボランチの一人」と高い評価をされている。そこに得点力やチャンスメイク力も身についたらどうなるか。欧州トップレベルのクラブでも主力を張れる選手に成長できるだけの資質を秘めているといっても言い過ぎではないかもしれない。仮にそうなれば、日本代表での競争に割って入る可能性も高まっていく。
[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]
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