なぜ持ち味のドリブルは減少? スーパーゴール連発の背景にある三笘薫の変貌「より簡単なゴールの方が難しい」【現地発】

今季のベストゴールとも称賛されたチェルシー戦での一撃は、三笘の名を世界に知らしめるゴラッソとなった。(C)Getty Images
攻撃面で存在感が消えても……
以前のコラムでも触れたが、筆者は今シーズンのパフォーマンスに躍動感が欠落しているように感じていた。ドリブルで仕掛ける場面は少なく、プレミアリーグデビューを飾った2022-23シーズンのような力強く相手を抜き去るシーンが大幅に減少していたからだ。
だが一方で、攻撃の際には効率よく得点に絡んでいる印象がある。これは、直近の公式戦6試合で4得点を奪っているように、シーズン中盤に入ってからは特に顕著になっている。記述したFAカップのチェルシー戦では、攻撃面ではほとんど存在感が消えていたものの、いつもの“ハードワーク”でチームに貢献していた。
物足りなさを感じながら観戦していた後半途中、突然、三笘が左サイドを駆け上がり、跳ね上がるようなスプリントから好機を演出。そこから結果的として自身の決勝点という“褒美”にたどり着いている。このゴールシーンについて、彼はこう振り返っている。
「(自分のパスからタリク・)ランプティがあそこまでシュートを打ち切ってくれた。僕自身もいいポジションを取る時間を取れましたし、あそこからまた中に入って打ち切れればいいですけど、まあ高いレベルでなかなか難しいところがありましたし、味方を使いながらいいポジショニングができたのが一番かと思います」
バランスを意識し、チームプレーを重視する今季は、とりわけ守備に重きを置いている。それを象徴する場面だった。そのため以前のようなドリブルでのフレア(閃き)を見せられていないのは確かだ。翻って、ゴール前でのフィニッシュの局面で集中力が一気に上昇し、一瞬の輝きが放たれるのではないだろうか。
今季のプレミアリーグでマークした6得点は、「メッシのようだ」(英衛星放送『Sky Sports』の解説者であるジェイミー・キャラガー氏談)と評された先日のチェルシー戦でのスーパーゴール以外は、すべてワンタッチでフィニッシュしたものばかり。左サイドからカットインして持ち込み、自らフィニッシュする類のものはなく、ボックス内でボールを受けて数回タッチしてシュートという場面も少ない。
文字通り効率良くプレーをゴールに繋げている三笘。筆者はチェルシー戦後に、この変化について聞いた。
「ワンタッチの方が確率も高いですし、再現性も高いんで、そっちの方が増えてるっていうのはいいことだと思います。より簡単なゴールの方が難しいところもあると思うんで、そこを何回もやり続けてきたところで、ワンタッチが増えてるのは嬉しい。こういうゴールも増やさないといけないのは、もちろん感じてます。でもゴールはゴールなんで。どんなゴールでもチームの勝利に貢献すればいいかなと思います」