なぜ持ち味のドリブルは減少? スーパーゴール連発の背景にある三笘薫の変貌「より簡単なゴールの方が難しい」【現地発】
弱気なコメントも減り、成長は止まらない
さらに左足を含めてシュート精度自体が高くなった点も見逃せない。自身が以前から課題としてきたフィニッシュ面で向上しているように、オンターゲットの回数が増えている。これについては、次のように私見を教えてくれた。
「そこは課題でしたし、取り組んでいるところでもあります。やっぱたくさん打つことでわかってくることもありますし。でももちろん2本目も決めないといけないシチュエーションでしたけど、それはもう練習している過程なので、いずれ出ればなという風に思ってますし、今後もっともっと出さないといけないなっていうのは感じてますね」
ドリブルで相手DFを置き去りにする場面は少ないかもしれないが、これも以前に本人が「周りで見ていると分からないと思う」と話した通り、効果的な動きを優先しているがゆえの結果だ。スピードがなくなったわけではなく、ただ要所でグッとギアを上げて、ゴールに絡もうとしているだけのこと。簡単に言えば、今季の三笘は“量より質”に移行しているのだ。
今季、英国のブライトン担当の記者と話していると、「ミトマやジョアオ・ペドロにハードワークを求めた結果、攻撃力が低下しているのではないか」という指摘も少なくなかった。つまりはヒュルツェラー監督の功罪を問うような意見である。しかしながら、三笘のシフトチェンジに関して言えば、逆に守備を重きに置くことが奏功しているのかもしれない。
付け加えれば、今季の三笘は非常にタフだ。ここまで怪我はなく、毎試合走り切っても、表情に疲弊感は見られない。過去2シーズンは走り続けた後の囲み取材で疲れた表情を見せた回数は幾度かあったし、実際に「疲れている」と弱気なコメントをしたこともあった。
だが、今季は、本人が納得していない時もあるとはいえ、常時一定以上のパフォーマンスができるようなコンディション維持を継続している。
ピッチ上でアップダウンを繰り返しながら、ボックス内で違いを見せる。オールマイティーなアタッカーへとバージョンアップしつつある三笘。その進化がどこまで続くかは非常に興味深いところである。
[取材・文:松澤浩三 Text by Kozo Matsuzawa]
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