“三笘対策”をいかにこじ開けるか プレミア2年目の三笘薫が直面する”真のスター”への試練【現地発】
チームが顔ぶれも変わった。そのなかで三笘は浮沈のキーマンとして存在感を強めている。(C)Getty Images
昨季の三笘薫は、ブライトン加入実質1年目ながらプレミアリーグでブレイク。カップ戦を含めて2桁ゴール(10)を挙げるなど飛躍を遂げた。一部メディアでは、今夏にもビッグクラブとの契約を成立させ、ステップアップする可能性が取り沙汰されたほどに、声価は高まった。
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結果的に三笘はブライトンに残った。そしてイングランドでの2年目は、ここまでプレミアリーグ戦8試合に出場して3ゴール、3アシスト。ヨーロッパリーグとリーグカップを含めると11戦で3ゴール、4アシストと上々の成績を残している。
ブライトンもプレミアリーグで5勝1分2敗、勝点16で6位と上々のスタートを切っている。第4節では、サウジアラビアの政府系ファンドの投資を背景に急伸するニューカッスルを3-1で撃破。翌5節でも、本調子ではないとはいえ、敵地で名門マンチェスター・ユナイテッドを同スコアで一蹴した。
現地10月8日のリバプール戦(プレミアリーグ第8節)でも、ゲームを有利に進めながら2-2で打ち合っており、これらの結果だけを見れば、好調を維持しているように映る。だが、試合を見ていると、三笘もチームも、昨季のようなハイレベルなパフォーマンスからはまだほど遠い状態にあると言える。
1-6の大敗を喫したアストン・ビラ戦後(プレミアリーグ第7節)、筆者は三笘に「最近は(試合の)流れが悪いように映る」とぶつけた。すると本人も意外なほどにあっさりと認めた。
「いやいや、もうあります。うまくいってないのは事実ですし。戦術的にやろうとしてるところはあるんですけど、うまくいってないですね」
チームが波に乗り切れない理由は多々あるはずだが、最大の要因は、やはり中盤の主力2人を失った点である。すったもんだがありながら、今夏の移籍期限ぎりぎりでチェルシーへと出ていったモーゼス・カイセドは、持ち前のダイナミズムでバックラインのブロック役をこなしながら、縦への推進力も抜群だった。守備で貢献しつつ、攻撃にも幅を出せる稀有な存在だった。
また、リバプールへと移籍したアレクシス・マカリステルは、昨季の前半戦はインサイドハーフ、途中からはトップ下とポジションを移しながら、自在に攻撃のタクトを振るった。さらにカタール・ワールドカップを制したアルゼンチン代表の中盤でレギュラーを張る実力者でもある。そんなふたりがいなくなれば、影響が出るのは必然である。
代わりに今季にプレイメーカーの役割を任されているのが、パスカル・グロスだ。開幕直後から好調を維持し、8月にはドイツ代表に初招集された32歳は頼もしい。しかし問題は彼以外に中盤でクリエイティブに振る舞える選手を欠くところ。負傷によりグロスがメンバーから外れた試合ではボーンマス戦こそ逆転勝利(3-1)を収めたものの、アストン・ビラ戦は、1-6と大敗。その影響が顕著に表れていた。
攻撃よりも守備を得意とするビリー・ギルモア、さらに今夏にドルトムントからやってきたマフムード・ダフードは、いまだプレミアリーグの水に慣れておらず。19歳のカルロス・バレバや18歳のジャック・ヒンシェルウッドは有望だが、経験値の浅い10代の選手である。これでは中盤からのパスの供給源が限られ、グロスを欠いた時に頼れる前線へのパスは、CBルイス・ダンクからのフィードのみになっている。
今夏にはバルセロナから“神童”アンス・ファティと、ゴール前でテクニカルに振る舞えるジョアオ・ペドロがワトフォードから加わった。どちらもドリブルも得意とする三笘と似たタイプの選手だが、まだチームにフィットしたとは言い難い。