「やれることは全部やる」ハマの不死鳥が見据える“完全復活のその先”――国指定の難病も乗り越える三嶋一輝の「現在地」【DeNA】
2軍で試行錯誤を重ねながら新たなスタイルを構築させた三嶋(C)萩原孝弘
灼熱の夏場に決意した走り込みの意義
「この時期に呼んでもらえたのは、嬉しいですね」
ペナントレースの勝負所となる8月、DeNAの三嶋一輝は、“再び輝く場所”、つまり1軍への帰還を果たした。ファームでの苦心の証でもある褐色の右腕をしならせ、リリーバーとしての使命を全うしている姿は、ファンの胸を打ち続けている。
【動画】帰ってきた藤浪晋太郎!日本球界復帰後の152キロ直球をチェック
今季は35歳の三嶋にとって「本当に勝負の年」と意を決して臨んだ複数年契約の最終年だった。しかし、開幕1軍入りは叶わず。2軍でも一定の結果を残しながらも、自らが納得できる内容を再現できない日々が続いた。
一体どうすれば、変わるのか――。三嶋は「ウエイトしたりとか、トレーニングも結構やったりして、体重も増えたりもしたんですよ」と筋力強化の練習も再びメニューに入れるなど試行錯誤を重ねた。しかし、「やっぱりなにかしっくり来なかったんですよね…」と己の理想には至らなかった。
辿り着いた答えは、オフにも取り組んだ原点回帰だった。「弓のようにしなる感覚」をもう一度取り戻すことを目標に定めた。
「この1か月間半は、朝からだいたい40分走っています」
灼熱の夏場に走り込みを敢行する三嶋は「一時期よりも6キロウエイトダウンしました」と肉体もシェイプアップ。無論、継続は容易ではないが、「朝からしっかりと身体を整えてスタートする。もうこれは絶対やるって決めているんで」と並々ならぬ決意で日々自分と戦った。
「球速が出てもドンっていう感じではないんです。シャッとなるようなボールが理想なんですよ」
独特な表現で語る理想を追い求め、球のキレはいつしか変わり始めていた。実際、不断の努力は結果にも繋がった。2軍ながら7月は防御率0.00。9試合連続無失点と数字も残し、遂に今シーズン初となる1軍への切符を手に入れた。
昇格後初登板は登録されて間もない巨人戦。終盤の1点ビハインドという大事な場面で白羽の矢が立った。当人は「緊張しましたし、周りからももう投げさせてもらえるんですねなんて言われましたね」と自嘲気味に話した、三嶋は7球を投げて無失点。キッチリと任務完了した。
2戦目は味方守備陣のミスに足を引っ張られたが自責点ゼロ。三浦大輔監督も「初戦よりもボールは良かったですよ」と太鼓判を押す内容で、昇格から3登板ながら防御率は0.00をキープしている。
なぜか詰まらせた当たりが不規則に回転したり、フェアゾーンに落ちたりとツキがない部分はある。それでも三嶋は「今の自分にできるアウトの取り方をやろうとしている結果です。でもそれは余裕がないと出来ませんし、自分のやってきたことに自信がないとできないことだと思います」と分析。ベテランならではの強かさは、大きな武器となっている。






