難病克服の苦悩も知る恩師が“引退”の言葉を呑んだ「まだ野球を続けます」 非情な戦力外宣告を受けた三嶋一輝の“ドラマ”【DeNA】
どんな時もしゃにむに腕を振るってきた三嶋。その姿を間近で見てきたコーチからは意外な言葉が漏れた。
終わらない“不死鳥ストーリー”
DeNAでのラスト登板を終え、三嶋は「やっぱり僕はまだ野球が続けたいっていう気持ちでマウンドに上がったので、バッターを抑えてやろうっていう気持ちの方が勝ってたといことは、やっぱりまだ現役でいたいんだろうなって改めて思いましたね。寂しいなって最後になるなっていう気持ちは投げてて全くなかったです」とキッパリと言った。
「(松尾)汐恩も『今日が1番いいんじゃないですか』って言ってくれましたし、周りのピッチャーもスタッフの方も今日が1番球が走っていたんじゃないって言われたので。自分もすごく野球に対して手応えも感じてますし、最後に全部真っ直ぐ、いいのもを見せられたかなと思いますね」
そう語る姿に感傷に浸る様子は見られない。しかも、この日の最速は149キロを計測。だからこそ、現役続行は自身のカルマと捉えている。
「去年も今年も150キロは出ていなかったですけど、こうすれば何かを掴めそうな気もするんです。病気もしましたし、35歳じゃもう無理だろっていう見方もある中で、まだできそうな気がするってちょっとでも思っている自分がいるなら、どんな舞台でも挑戦しなきゃいけないと思います」
チームの先発投手陣が脆弱だった18年には60、19年は71、20年は48、21年は59もの試合に登板した。「酷使」と言われた頃でも「エスコバーがよく言う『今日投げられるチャンスあるかな。あるよね』の言葉が好きなんです」と鉄腕助っ人と同調していた。それほど投げることを求める男が、このまま矛を収める選択肢はやはりなかった。
「これからまたスタートだと思ってもがきますよ。いまは先が見えないじゃないですか。どこで野球してるかわかんない、出来ないかもわかんない。今までは大学出てドラフトで指名されて、拾ってもらってここで野球やって。でもこれからはまた違う、新しい自分の人生のスタートになると思うと、ワクワクしますよね」
「攻める・逃げない・やり返す」を貫き通す35歳の野球少年のチャレンジ。波乱万丈な三嶋一輝の野球ドラマは、まだまだ終わらない。それが“不死鳥”の生き様なのだから。
[取材・文/萩原孝弘]
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